九州大学大学院工学研究院  船津和守

九州大学大学院医学研究院  杉町圭蔵


肝移植治療の現状とハイブリッド型人工肝臓の必要性

 肝臓は500種類以上の複雑多岐な機能を有する代謝の中心臓器であり,一度肝臓が機能不全に陥ると重大な生命の危機にかかわる。現在重度の肝不全患者の根本的な治療法は肝移植のみであるが,臓器提供者が格段に増加することは期待できず,人工物中で培養した肝細胞に肝機能補助を行わせるハイブリッド型人工肝臓の開発が必須である。


 

ハイブリッド型人工肝臓の概念と目標

 ハイブリッド型人工肝臓とは,肝細胞を人工物に充填した人工肝臓モジュールを用いて生体外から強力なサポートを行う体外設置型の治療システムである。当面の目標は,劇症肝炎や術後肝不全患者の治療肝移植待機中の短期的な「橋渡し」を実現できる2週間程度機能維持する人工肝臓の開発である。将来的には,慢性肝不全患者の治療肝移植までの長期的な「橋渡し」を実現できる数ヶ月間機能維持する人工肝臓が必要である。


 

九大グループのハイブリッド型人工肝臓開発経緯

 我々は約12年前より,単離細胞に高機能発現を維持する肝細胞組織体(オルガノイド)を形成させる独自の再組織化手法を利用して高性能なハイブリッド型人工肝臓の開発に取り組んでいる。既に急性肝不全治療用人工肝臓の開発はほぼ完了し,現在,慢性肝不全治療用の新規人工肝臓の開発に取り組んでいる。

 

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研究課題:ヒト臨床応用を目指した高機能性ハイブリッド型人工肝臓の開発
研究組織:工学部・医学部
審査部門:生命科学  採択年度:H9-H10  種目:B  代表者:船津 和守(工学研究院 化学工学部門 教授)