割石 博之(農学研究院 森林資源科学部門 助教授)


 1997年4月29日に、化学兵器禁止条約が発効された。この条約は、化学兵器の保有・取得・生産・貯蔵・移転・使用を禁止し、発効後10年以内に現存する化学兵器を破壊することを締約国に定めている。さらに、他の締約国の領域内に遺棄したすべての化学兵器の廃棄を完了することも義務づけられている。日本は1995年9月15日に批准した。1997年4月25日に中国も同条約を批准し原締約国となったため、我が国は同条約に基づき中国の遺棄化学兵器を廃棄する義務を負った。中国遺棄化学兵器とは、第二次世界大戦後、旧日本軍が中国大陸に大量に遺棄したもので、多くはそのまま放置されている。現在、内閣府(遺棄化学兵器処理担当室)が政府全体の総合調整および廃棄処理実施にむけた業務を行っている。これまで、日本政府の現地調査で、推定約70万発相当の旧日本軍の化学兵器が中国国内に存在するとして化学兵器禁止機関に対し申告を行った。我が国として、日中共同声明・日中平和友好条約の精神を踏まえ、化学兵器禁止条約上の義務を誠実に履行していく方針を打ち出している。


旧日本軍中国遺棄化学兵器の特徴
(1) 各種の遺棄化学兵器が混在して埋設されている。
(2) 遺棄化学兵器のほとんどは吉林省敦化市ハルバ嶺地区(約67万発)に埋設されているが、埋設地および保管場所は、南は浙江省から北は黒龍江省まで広く分布している(下左図)。
(3) 戦後長期間にわたって埋設されていたため、腐食および損壊が進んでいる。
(4) 砲爆弾(きい弾)にはピクリン酸が伝火薬または炸薬として使われている(下右図)。
(5) 砒素を含む化学剤(ルイサイト等)が混在する(下右図)。



旧日本軍が中国に放置した化学兵器



きい弾の構造および使用された化学剤

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研究課題:森林微生物の生物機能解析・強化による次世代対応型プロセス工学・環境工学への新展開
研究組織:農学部・工学研究科・薬学部
審査部門:広領域  採択年度:H10-H11  種目:B  代表者:割石 博之(農学研究院 森林資源科学部門 助教授)