代表者:金澤慎二郎 (九州大学大学院農学研究院 教授)

教育・研究の概要
 超高温好気発酵法による「21世紀型有機性廃棄物の資源化システムの創生」を構築するために、農と医の教官と学生の共同作業により実施する。
 学内から発生する生ゴミを学外に出さない、いわゆる、キャンパス・ゼロエミッションシステムを創生する。本研究成果は、九州大学研究都市づくり関連研究として活用する。

1.バイオリアクター省エネ発酵法の開発
 有機性廃棄物の堆肥化を迅速に行うために、新規に高い発酵熱を活用するバイオリアクター省エネ発酵法を開発する。

2.バイオ熱温室の創生
 九州大学方式として、「ヒートポンプにより回収した発酵熱によるバイオ熱温室の創生」の基礎研究へと発展させる。

3.堆肥の安全管理システムの構築
 病原菌の残存の有無を衛生医学の観点から把握し、安全管理システムを構築する。

超高温・好気発酵法とは?
 従来の堆肥化法より短期間で製品となる

 高い発酵熱によって病原菌(大腸菌群・サルモネラ菌群は確認済)・寄生虫
  卵・雑草種子を死滅させる

 悪臭を速やかに低減する


なぜ、超高温・好気発酵なのか





超高温・好気発酵法による下水汚泥(A:石灰凝集剤)
コンポストの製造過程の模式図とその温度変化

新潟下水汚泥コンポスト化過程における発酵温度の変化



拡大図はこちら







尿との混合準備

尿と種堆肥との混合作業

牛糞

混合作業

混合作業

堆積準備中の発酵槽

堆積作業終了

温度計設置作業

ブロアーと配管の全景

ブロアーの配管及び熱回収用水管

切返し作業

バイオ熱回収装置
(発酵槽の壁面)

バイオ熱回収システム
の全景

剪定枝の調整

伊方発電所は、四国の西北端から九州に向かって細長く伸びた
佐多岬半島の瀬戸内側の付け根にあります。


剪定枝とその粉砕物

剪定枝の粉砕作業状況

草及び樹木葉の調整

ムラサキ貝の貝殻粉砕機

ムラサキ貝の堆肥化状況

ムラサキ貝の発酵及び
温度測定状況

ムラサキ貝堆肥の製造
状況(四国電力伊方原発)

雪の中の工場全景
切返し中 工場南側シャッター
H14.2/17
切返し1回目1日
温度85℃,83.5℃,84℃
工場温 -4℃
H14.2/21
切返し1回目5日
温度84℃,89℃,87℃

除雪後ブロアー室






有機栽培野菜における大腸菌群などによる汚染
(上田・桑原,2002)


注 菌数は、陽性試料の平均値と標準偏差を示す。大腸菌群とセレウス菌では菌数の対数を、また糞便性大腸菌群では菌数の実数を表示していることに注意
有機肥料原材料※※は、魚かす、菜種、肉骨粉、皮粉、ふすま、おから、魚粉、ボカシ、トウゲン、バイムフード、および骨粉各1点

下水汚泥(A:石灰凝集剤)の発酵過程における細菌数の変化

総アミノ酸(蛋白質)含量
下水汚泥(高分子凝集)の堆肥化過程における総アミノ酸含量の経時的変化

例)各堆肥化試験における衛生指標菌(大腸菌群)の測定





Direct Viable Count 法(高温性細菌の検出)
高温条件下(60℃)で増殖能を持つ
細菌は伸長・肥大する。

・試料懸濁液    500μl
・滅菌除菌水    300μl
・基質溶液     100 μl
  酵母エキス   (200ppm)
・核酸合成阻害剤  100 μl
  ピペミド酸  (50ppm)
  ノルフロキシサン(50ppm)

切り返し5回目での菌体の長径およびその個体数頻度




悪臭成分の変化−熱分解ヘッドスペースGC-MSによる分析−

原料下水汚泥(高分子凝集)中の悪臭成分


下水汚泥(高分子凝集)と種菌堆肥の混合時における悪臭成分
下水汚泥(高分子凝集)堆肥の切返し7回目における悪臭成分
混合で殆どの悪臭成分が減少した。1回目の切返しでその大部分が消滅し、
その後アンモニア以外の悪臭は発生しなかった。


No.52株によるn-酪酸の資化性試験
No.52株の同定
 No.52株の16S rDNAの配列を一部決定して、BLASTによる相同性検索を行った結果、No.52株は以下の細菌種と近縁であることが明らかとなった。
Dietzia maris strain SAFR-019 98.9%
Dietzia sp. strain CIP104289 98.5%
Dietzia psychralcaliphila 98.5%

   Dietzia 属は放線菌等と同じActinobacteria綱 (高G+Cグラム陽性細菌)に属している。主に土壌圏から分離されているが、海底や動物体からも分離例がある。油分解菌や好冷性好アルカリ性炭化水素資化菌等が分類されている。

 
要約
超高熱細菌の利用による“超高温・好気発酵法”による発酵温度(製造期間中80℃以上)が高いため、
1) 完熟堆肥が安価・迅速・簡便に製造できること、
2)

1グラム当たり数十億から数百億個もの菌体が存在する機能性豊かな菌体肥料であった。
3)
病原菌、回虫卵や雑草種子が死滅すること、
4) 臭気成分が速やかに消滅すること、
   等が明らかになった。

 公衆衛生学的にクリーンなため、安全・安心な“バイオハザード・フリーコンポスト”(有機肥料)の製造が可能となった。
 本研究により、わが国に適合した欧米と異なる“Made in Japan”の有機性廃棄物の資源化システムを構築することができた。

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