|
||
1.研究の背景
水はすべての生命の源。水なしでは生命を維持することは出来ません。日頃私たちが当たり前のように使っている水も、国や地域が変われば |
||
|
||
研究課題:土地利用の概要は? 自然を守る森林はどこにあるのか?
(農学研究院 村上 拓彦) 土地被覆別の蒸発散量推定モデルを構築すると共に,各土地被覆の空間分布状況について把握されておく必要がある。データに対し,オブジェクトベース土地被覆分類を適用し,その精度について検討を行う。この研究は土地利用に応じた可能蒸発散量などの推定に必要な情報を与えることになります。 |
||
2.研究構成員とこれまでに明らかになったこと
研究者の所属と研究テーマを紹介します。 構成メンバーは以下のようになっております: (工学研究院)神野健二・楠田哲也・江崎哲郎・河村明・久場隆広・西山浩司 (理学研究院)矢原徹一・島田允堯 (農学研究院)小川滋・真木太一・ 大槻恭一・福田哲郎・脇水健次・村上拓彦・森牧人 (薬学研究院)内海英雄 (応用力学研究所)柳哲雄 (新キャンパス推進室)広城吉成・新井田浩 この研究で得られた成果は、新キャンパスの建設に関わる様々な『水環境』の課題にフィードバックされるよう、移転推進室と連携を取っています。 研究テーマ 流域水循環システム: 1)糸島地域水収支モデルの構築 糸島地域の水循環系の現状把握及び将来予測を行い九州大学統合移転計画に基づく施設配置計画と、上下水道や河川改修などの事業計画を一 体的に捉え、健全な水循環系構築のための水収支モデルを構築する。 2)糸島地域における農業用水の最適管理に関する研究 地域の伝統的・現代的営農実態に関する多目的水利用調査、土壌調査、水管理実態調査、生態系調査、環境汚染に関わる物質循環調査を実施 する。農業用水の最適管理についてシミュレーションモデルによる数値実験を試みる。 3)開発による局地気象・微気象変化の評価・対策 気象環境変化の評価および局地・微気象(気候)緩和(気候改変の最小化)を実施する。 |
||
研究課題:地表付近での雨水の分離をどのようにモデル化すると、
地下水涵養量を予測できるか? (工学研究院環境システム科学研究センター 神野健二) |
||
研究課題:樹木はどのくらい雨水を遮断できるのか?
(九州大学演習林 大槻 恭一) |
||
水環境・生態系システム
1)開発による水質環境に及ぼす影響評価モデルの開発 新キャンパス圏の水循環に関わる量的、質的データ、および地下水データ、キャンパスにおける水利用、排水データをもとにGISシステムや 統合的水循環システムモデルを用い、水量、水質環境に及ぼす影響評価モデルを開発する。 2)開発が地域の生態系変化に及ぼす影響と保全対策に関する研究 開発行為下での生物多様性を保全する技術、生態系設計・生態系管理の技術を開発する。 3)土壌および地下水汚染の地球化学的評価モデルの構築 地下水帯水層の水文・地質調査を行い、地下水要監視項目の基準について検討する。法定汚染物質の検出手法を検討し、地球化学的汚 染評価モデルを作成する。 |
||
モデルによる大原川上流の 水収支や湧水量の予測 ↓ 生物多様性保全ゾーンへの 流出量の監視 |
||
研究課題:開発が地域の生態系変化に及ぼす影響と保全対策に果たす 湧水の確保(理学研究院 矢原 徹一) |
||
|
||
研究課題:水源として利用される地下水はどの位の速さで 流動するのか?(新キャンパス移転推進室 広城 吉成) |
||
研究課題:開発前後の新キャンパス周辺地域での淡水及び塩水流動数値 シミュレーション(工学研究院 環境システム科学研究センター 神野健二) |
||
|
||
研究課題:海岸近くで井戸水を汲み上げると塩水が入って 来るのはどういうメカニズムか? (工学研究院環境システム科学研究センター 神野 健二、 大学移転推進室 広城 吉成) |
||
↓ | ||
地域の貴重な地下水資源や水環境を保全するためには 雨水の浸透機能を確保することが重要であると考えます。 開発者がこのような施設を設置することは、急速な都市 化が進展する地域で特に必要です。 |
||
研究課題:開発による水循環機構の変化を軽減するにはどうしたらいいか? (工学研究院環境システム科学研究センター 神野 健二、 大学移転推進室 新井田 浩) |
||
4)今津湾および博多湾域における富栄養化に関わる物質輸送モデルの開発 糸島地域からの排水の変化が今津湾および博多湾の物質循環にどのような影響を及ぼすかを観測とモデルにより明らかにする。 5)水環境中の有害物質の毒性評価に関する研究 水環境を媒体とする化学物質の複合汚染の有害負荷量評価を行うための 諸問題を明らかにし、管理に向け新たな考えを提案する。 |
||
研究課題:使った水は下流の水域へどのような影響を与えるのか? (工学研究院 楠田哲也 久場隆広) |
||
↓
排水先の水環境への配慮 今津湾の1次生産を律速しているリン循環を表す物理・生態系モデルを構築し、2002年の湾内外の観測値を再現した。九大移転後の今津湾へのリン負荷量増加は定量的には明らかにされていないので、今津湾へのリン負荷量が1.2倍、1.5倍になった場合の湾内のDIP、Chl.a濃度を予測した。その結果、DIP濃度は1.1倍、1.2倍になるが、Chl.a濃度は1.004倍、1.008倍にしかならないことがわかった。これは、現在今津湾内のChl.a濃度より湾外のChl.a濃度が高いためである。 ↓ |
||
研究課題:排出先の水域の環境はどのような影響を受けるのか? (応用力学研究所 柳哲雄) |
||
3.成果の大学移転事業への活用:
大学内の別々の組織に所属する研究者たちが、糸島地域を1つの共通のフィールドとして選び、研究や教育を連携して行うことは、大変意義深い ものと考えます。 また、様々な角度からこの地域を眺めることが出来れば、土地利用の変化による『水循環機構の変化』、あるいは『自然保護の ための水の役割』のための最善の方策を探ることが出来るものと考えます。このように、1つの地域ではありますが、「水の循環」という1つの共通理念に立つ試みは、国内外への貴重な情報発信源になると考えられます。 例えば「大学移転事業への成果の活用:都市水害法を踏まえた総合的な治水対策に関する一考察」(土木学会誌、Vol.89, No.7, 2004, pp.069-072) 新井田 浩 神野 健二 広城 吉成 |
||
この検討においては、水崎川の当面の治水安全度1/10を確保するように新キャンパスの流出調整池設置と河川改修を平行して暫定的に行い、最終的には水崎川のポンプ排水能力を上げることによって治水安全度1/30を達成する案です。これにより、調整池の過大な建設や撤去を減らし、ポンプ排水能力も小さくできるという公共事業費の経費を節減できるのではないかと考えます。 |
||
4.最後に
「水」に関わるこの課題は、地域の社会的情勢や限られたデータで自然現象を取り扱わなければならないこともあって、まだ十分に納得のゆく段階には達しておりません。ただ、息の長いデータの蓄積は、将来きっと役に立つときがくるのではないかと考えます。「糸島地域における健全な水循環系の構築」はこのような視点に立って永続することに意義があるものと思います。 今後とも皆様のご協力をお願いいたします。(研究代表者神野) |
||
フレームが表示されていない場合はこちら |