九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト
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研究代表者:梶原 健司 (マス・フォア・インダストリ研究所) |
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■研究課題の概要 |
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数理学研究院では、平成15年度入学生から、理系の新入生に対して毎年4月に数学基礎学力調査を行ってきた。高校教科書基礎レべルの問題を用いて毎年同じ問題で継続して行い、数学基礎学力の実態とその経年変化を客観的に把握するためのデータを収集し、九州大学の数学教育などに生かしてもらうことが目的である。平成21年度教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクトの補助を得て、調査・集計・分析・周知を迅速に行い結果を1年次の数学教育に直ちに反映させるための盤石な体制を確立し、また、成果を社会に還元するために結果を外部に発信したり高等学校との連携を図るなどの活動を行った。 本調査は8年にわたる1000人強の標本数の継続調査となり、理系新入生の基礎学力の低下の深刻な実態を示す客観的な定点観測データとして重要な意味があると思われる。今後もしばらく続ける予定である。 |
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■学力調査の概要 |
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4月最初の授業の週の数学の時間を用い、毎年同じ問題を用いて行う。 |
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■調査結果の概要 |
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図1:平成21年(2009年)と22年(2010年)の正答数の分布(20点満点) および各年度の平均点と受験者数 |
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図2:右のグラフは正答率90%以上の受験者(「上位層」)の割合(%)の推移 左のグラフは正答率60%以下の受験者(「下位層」)の推移 |
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図3:22年の問題ごとの正答率 |
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高校数学基礎レベルの理解が不十分と見られる下位層が全体の20-30%を占め、この層は長期的に漸増傾向にある。 上位層が期待よりかなり薄い。2006年に現指導要領による教育を受けた学生が入学したが、現指導要領による影響は、上位層の激減とその定着という形で現れた。 2010年に正答率が全体的に上昇したが、その理由は社会・経済状況による九大受験者層の変化による可能性が高い。変動の大きさは上位層の薄さを示唆するように思われる。 基礎からの理解が必要な問題(問7、問13)や少し計算量が多い問題(問19)は正答率が激減する。知識の脆弱化が進んでいる。 この調査結果が九州地域トップ層の実態を示すものであることや、科目としての数学の特性を考えると、事態は深刻である。逆にそれだけ大学における数学教育の責任は重い。 |
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■シンポジウム |
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「数学力低下にどう対応するかー高等学校・大学・教員採用の現場からー」 |
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■結論
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研究課題:学力低下問題に対応するための新入生数学基礎学力調査
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