知の中継地としての日本に関する総合的研究
研究代表者 松永 典子(比較社会文化研究院 日本研究プロジェクトチーム)
研究概要
 本研究は、日本が伝統的に「知の中継地」としての役割を担っていたこと、また「知の加工」に秀でていることに注目し、そうした「知の中継地」としてのアイデンティティを持つ国として日本を捉えることにより、日本研究の新たな視点を得ようとするものである。すなわち、日本がこうした「知の中継地」の役割を果たしてきたことに着目し、日本における新しい、世界に発信できる学問体系(「知の加工学」)を創出しようとするものである。加えて、実際に、現代の文脈において、「知の加工」の成果を数多く生み出し、その社会的還元を目指す。
 「知の加工学」とは、世界における様々な先端の知識を受容し、背後の原理を探り、受容した知識の革新および改善を行い、その成果を利用し自分たちの国作り・社会作り・地域作りに活用する、あるいは他者の同様の利用にむけて発信するという一連のプロセスを指す。
 具体的には、日本による先端の文化・技術・思想・制度の受容・加工・発信のプロセスとその手法を解明すべく、日本語教育・日本文学、日本史(技術史)、地理学などからなる「文化・歴史班」と、政治学(政治理論、政治思想、国際政治学)からなる「政治・思想班」、科学技術史・軍事史・経営史などからなる「産業・技術班」という三班を配置し、さらに各計画研究班において知の受容・加工・発信のプロセス・手法を解明する。各計画研究班での研究と併行して、各分野で意識化されていない分野間の連携を意識化・体系化する作業を総括班で行う。以上の作業をもとに、本研究では、新しいディシプリンとしての「知の加工学」の創成の基盤づくりを目指していく。

各研究班の研究課題

1 文化・歴史班

a「アジアの近代化過程における留学と人材養成
   ――知の加 工・活用・発信――」
b「輸入し、加工する技術・学問に関する基礎的研究」

2 政治・思想班
「アジアの市民社会基盤形成と日本の役割
   ――知の受容、加工、発信――」

3 産業・技術班

「近現代日本における技術標準の構築過程の解明」

4 総括班
「知の受容・加工・発信の手法の一般化・意識化・体系化」


ホームページ
http://www.scs.kyushu-u.ac.jp/scs_new/pandp/index.php

研究成果1 
 2009年度 P&P「知の加工学」シンポジウム 
   「日本的なもの」の再評価――「知の加工学」の視点から――

★11月3日(火曜日(祝日)) 13 時〜16時30分
 西日本新聞会館 福岡国際ホール
★プログラム
 シンポジウムの趣旨説明・司会 
 (施光恒・九州大学大学院比較社会文化研究院・准教授)
★基調講演 o長谷川 櫂 (俳人)「和の思想」
 (『和の思想――異質なものを共存させる力』中公新書、著者)
★パネル・ディスカッション
 ・楢原孝俊(福岡医療福祉大学・教授)
  「横井小楠における自然法的天理」
 ・大屋雄裕(名古屋大学大学院法学研究科・准教授)
  「法整備支援と日本の経験」
 ・松永典子(九州大学大学院比較社会文化研究院・准教授)
  「近代中国人留学生教育における知の加工」



2009年シンポジウム
2009年シンポジウム 基調講演
研究成果2

2010年度 P&P「知の加工学」シンポジウム 
        「知の加工学」からみた日本の技術経営

★日時:12月11日(土)13時30分〜16時30分
 場所:伊都キャンパス稲盛記念館1Fホール
★プログラム
(司会):三輪宗弘教授・九州大学記録資料館
発議1:北陸先端科学技術大学院大学・梅本勝博教授
   「日本企業における技術経営」
発議2:北陸先端科学技術大学院大学・伊藤泰信准教授
   「ビジネスによって加工される学的知:産業系エスノグラフィを
    めぐって」
発議3:九州大学経済学研究院・高田仁准教授
   「日本における産学連携」
発議4:九州大学比較社会文化研究院・吉岡斉教授
   「日本の原子力メーカーの国際戦略」 
総合討論



2010年  シンポジウム



2010年 シンポジウム 総合討論

研究成果3
 大学院の授業科目:総合演習「知の加工学」の開設
この授業では、世界の先端の知識を受容し、またそれを加工、発信する一連のプロセスを、「文化・歴史」、「政治・思想」、「産業・技術」など様々な側面からとらえ、総合的に「日本」を研究することを目標にする。演習はオムニバス形式で、それぞれの分野における研究成果を講義したうえで、参加者全員での議論を行う。 
授業風景2010 前期 

授業風景 2010 後期

研究成果4:研究成果の出版

 松永典子、施光恒、 吉岡斉編
  『「知の加工学」事始めー受容し、加工し、発信する日本の技法』
                        編集工房球、2011年


研究課題:知の中継地としての日本に関する総合的研究−「知の加工学」の創成に向けて−
研究組織:比文 審査部門:人社系  採択年度:H21 整理番号:21416(f枠) 種目:E-2タイプ(人文・社会科学及び基礎科学)
代表者 :松永 典子(比較社会文化研究院 教授 )

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