ペルオキシソームの形成機構を構造生物学的アプローチ
によって解明する |
研究代表者 佐藤秀輝(理学研究院 学術研究員)
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■ペルオキシソームとは?
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我々の体は約60兆個の細胞によってつくられていて、それら一つ一つの細胞は細胞小器官によって構成されています。細胞の生命活動を維持するために、この細胞小器官が様々な役割を分担して活動しています。その中で、この細胞小器官の一つであるペルオキシソームは主に脂肪酸の代謝の役割を担っています。
このペルオキシソームの形成に異常があると重篤な先天性疾患を発症することが知られており、ペルオキシソームの形成されるしくみを理解することは重要な研究課題となっています。 |
■ペルオキシソームが形成されるしくみ |
ペルオキシソームの中(内腔、マトリクス)には脂肪酸の代謝等を行うために数百種類の酵素(マトリクス・タンパク質)が働いていて、それらを運んでくるのがペルオキシソーム・タンパク質のPex5pです。このタンパク質の輸送は以下の順に進んでいきます。
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マトリクス・タンパク質が細胞質でリボソームによって合成される。 Pex5p(図中のトラック)がマトリクス・タンパク質のペルオキシソーム移送シグナルを認識し、結合する。 ペルオキシソームの入口はPex14とPex13pによって形成されている。この入口をPex5pが認識することによって、ペルオキシソームに到達することができる。 Pex5pは積み荷をペルオキシソームにおろした後、Pex2p、Pex10p、Pex12pの複合体(図中の工場)によってユビキチン化される。 ユビキチン化されたPex5pはp40によってPex1pとPex6pの複合体へと導かれる。 Pex1pとPex6pの複合体はATPと呼ばれる生体内エネルギーを利用して、Pex5pを再び細胞質へと送り出す。 送り出されたPex5pは積み荷を運ぶため再利用される。 |
本研究では、この一連の仕組みの中で働くタンパク質の中で、まだあまり研究が進んでいないPex1pとp40に着目し、これらの立体構造解析に取り組んでいます。
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■タンパク質の立体構造解析とは |
タンパク質が持つ機能はその構造と深く関わりあっています。例えば、ある脂肪酸を分解するためのタンパク質はその脂肪酸だけが結合できるようなポケットと分解するための形をもっています。またDNAと結合するタンパク質は、そのための共通の構造を採っていたりもします。従って、立体構造を解明することはそのタンパク質の機能の詳細を解明することにつながります。また、タンパク質の立体構造情報は応用面においても様々な薬剤の開発に役立てられています(例、インフルエンザ薬タミフル)。タンパク質工学においても、新しい機能を持ったタンパク質を作るために立体構造情報は利用されています。 |
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■構造解析に向けた目的タンパク質の高純度精製 |
本研究ではペルオキシソーム・マトリックスタンパク質に働くPex1pとp40に着目し、これらの立体構造解析に着手しました。昨年度の一年間で、大腸菌によるこれらのタンパク質の大量発現に成功し、3つのステップで目的のタンパク質を高純度に精製することに成功しました。現在は結晶化に向けて結晶化条件の探索を行っています。 |
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研究課題:ペルオキシソームの形成機構を構造生物学的アプローチによって解明する
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