疫学的アプローチによる学生の メンタルヘルス支援に向けたシステム構築 EQUSITE Study (Enhancement for Q.Univ Students InTElligence Study) |
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研究代表者: 熊谷秋三 (健康科学センター) |
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■研究の背景 | ||||||||
近年,大学生のメンタルヘルス悪化への対策は喫緊の課題となっています.九州大学健康科学センターでは,学生のメンタルヘルスを改善させる取り組みを精力的に行ってきていますが,多数のメンタルヘルスの低下した学生に対処していくには,より早期の効果的・効率的な介入や予防教育も重要となってきます.それらを充実させていくため,まず,学生のメンタルヘルスの実態を調査し,脳科学の知見を用いながら「脳の健康づくり」の促進に必要な身体運動, 対人関係サポート, 生活習慣等の基礎的知見を収集する必要があります.
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■研究の目的 | ||||||||
学生のメンタルヘルス支援システム構築のための基礎資料を得るために,大学生のメンタルヘルスの実態と生活習慣や学生生活状況との関連を明らかにすることを目的としました.
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■研究方法 | ||||||||
研究デザイン:4年間の前向き調査
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■結果 |
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(1)主観的健康感,生活の規則正しさとうつ症状との関連 |
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主観的健康観,生活の規則正しさとうつ症状(CES-D得点)との関連について,一元配置分散分析(多重比較:tukey法)を用いて解析を行った結果,自分自身について,「あまり健康でない/全く健康でない」と感じている学生は,「非常に健康である」「健康である」と答えた学生に比べて,CES-D得点が有意に高い(p<0.0001)ことが明らかになりました.また,生活の規則正しさについては,「非常に不規則」と答えた学生は,「非常に規則正しい」「まあまあ規則正しい」「あまり規則正しくない」と答えた学生と比べて,CES-D得点が有意に高い(p<0.0001)ことが明らかになりました. |
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(2)勉強習慣・運動習慣とQOL(Quality Of Life)・SOC(Sense Of Coherence) との関連 |
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QOLとは人生・生活の質をとらえるものであり,SOCとはストレス対処能力を測る指標です.勉強習慣,運動習慣とQOL・SOCとの関連について,一元配置分散分析(多重比較:tukey法)を用いて解析を行った結果,一日に全く勉強をしない学生に比べて,少しでも勉強をしている学生の方がQOL・SOCの得点が高く(ともにp<0.0001),全く運動をしない学生と比べて,ときどきでも運動をしている学生の方が,QOL・SOCの得点が高い(ともにp<0.0001)ことが分かりました.
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図3.勉強時間とQOLの関係
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図4.定期的な運動習慣とQOLの関連
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図5.勉強時間とSOCの関連
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図6.定期的な運動習慣とSOCの関連
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3)学生生活とうつ症状の関連 |
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学生生活とうつ症状(CES-D得点)の関連について,t検定を用いて解析を行った結果,「楽しみにしている講義がある」「この大学は居心地がいい」「大学の友達とよく遊びに行く」「試験・勉強などで困ったとき相談できる友人がいる」と答えた学生は,そうでない学生よりも,CES-D得点が有意に低いことがわかりました.一方,「通学に時間がかかりすぎて自分の時間が持てない」「学生生活を送る上で経済的な不安がある」と答えた学生は,そうでない学生よりも,CES-D得点も有意に高いことがわかりました.
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■研究の要約 |
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大学生のメンタルヘルスには,健康であると感じられること(主観的健康感)や,規則正しい生活習慣(定期的な勉強習慣・運動習慣を含む),学生生活での居心地の良さ(通学の負担や経済的な心配が少なく,良好な友人関係を築けること等)が非常に重要であることが明らかになりました.今後は,4年後のフォローアップ調査などの研究を継続し,得られた結果を,九州大学の学生に対する全人教育や支援体制の充実につなげていきます.
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研究課題:疫学的アプローチによる学生のメンタルヘルス支援に向けたシステム構築 |
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