地域社会貢献型の科学情報発信と
双方向コミュニケーション創生に関する
開発研究プロジェクト

研究代表者:研究代表者 副島雄児
(基幹研究院 教授) 


1.背景

 研究・教育の質の向上と並行して、科学および技術開発研究の成果を積極的・効果的に広く一般社会に情報発信し公開することや、市民レベルでの科学リテラシー啓発活動の一環として、それらの成果を社会へ還元することの重要性と必要性が認識されていおり、各大学も意識的・戦略的に取り組みを行っている。
 一方、九州地域ではこの波に乗り遅れている傾向にあるが、福岡圏域を中心とした科学教育活動や科学リテラシー啓発事業は、先行地域と比較しても特色あるものとなっている。九州大学においても、個々の活動は活発の波に乗り遅れている傾向にあるが、福岡圏域を中心とした科学教育活動や科学リテラシー啓発事業は、先行地域と比較しても特色あるものとなっている。九州大学においても、個々の活動は活発であり、社会的な関心や評価が得られている状況にある。

 
毎年11月にある「フクオカ・サイエンスマンス」は、JSTの事業立ち上げにおいても、参考にされたという。

全国知事会ウェブサイト先進政策バンクの写真を引用

 

2.課題

 科学コミュニケーションに関する九州大学での取り組みは、個別的であり、技術的に「素人」である科学者が苦心して実施しているという実情がある。集客状況やメディアによる広報等の戦術が不十分であり、広く一般市民の関心を得られていないこと、「九州大学」としての継続的な社会貢献活動としての認知や定着に至っていない。本学の個々事業は貴重で重要なものであるにも関わらず、費用対効果の観点からは十分なものとなっていない。全体を俯瞰する視点・戦略がないからではなか。

 

3.目的

 本学が先導し地域社会貢献に資する科学情報発信の「場の設立」と、これを利用した科学情報に関する「双方向コミュニケーションを創生」するための手法と組織編成に関る開発研究を行う。学際・複合的な実践的研究の推進体制を組織し、本の科学情報発信の手法と地域社会貢献のあり方を検討する。

 


 2012-2014年度まで、提案機関を九州大学として、科学技術振興機構(JST)「(現)科学コミュニケーション推進事業 ネットワーク形成地域型」に『Science for All Fukuokansネットワーク (SAFnet)の構築 ーサイエンスモールin福岡ー』採択されている。本学はこの事業を先導する立場にあり、支援終了後も実質的な中核大学となるべく推進強化体制を確立する必要がある。

 

4.実施

研究会・セミナー

 研究会(計6回):アウトリーチ活動および科学コミュニケーション活動に関心を持つ学内の研究者に呼びかけ、今後九州大学にあるべき拠点の在り方とその形成活動に対する意見交換を行った。
セミナー(計2回):

第1回:マサチューセッツ工科大学(MIT)の状況とアメリカ国立博物館における状況報告
第2回:東北大学でのアウトリーチ活動の現状、東京大学理学研究科での任務状況、任務内容、および活動上の問題点の指摘、海外におけるアウトリーチ活動を担う充実した組織体制の事例報告、福岡県におけるSSH活動報告などをふまえ、活発な総合討論がなされた。

 

 


訪問調査:特に広報・情報発信関連
(協力研究者:中道氏※1による調査)

マサチューセッツ工科大学
MIT News Office

○専属スタッフ15名
○各研究科に1人、記事の書ける担当者を配置
○各担当者は研究者と直接会って連絡をとる
○できれば画像・映像・写真・webの専門家を雇用
○アクセス解析を行い、その内容を学内に公表

MIT Goverment and
community relations Office

○アウトリーチ活動全体を統括する組織はない
○窓口となる組織はMIT public service center
○高校の先生向けに生物の実験ノウハウを提供したり、夏休みに実験教室を開いたりと様々な活動が行われている






・充実したスタッフによる支援態勢
・綿密なコミュニケーション
・まめな情報収集

東北大学※1
大学直営サイエンスカフェ

副理事が筆頭の広報戦略会議下に、サイエンスカフェWG設置。年2回、全体ミーティングを開き、半年間のスケジュールと講演者決定。事務局は広報課。過去5年間の運営蓄積をまとめたマニュアルをもとに運営。総長裁量経費で年間約500万。

サイエンスエンジェル

平成18年「女性研究者支援モデル事業」のひとつとして発足。人件費(TA・RA雇用)として総長裁量経費で運営( 年間200万)、審査(志望動機)を経て採用。実施対象は高校生+イベント等で小学生。

※1:生物学科のweb広報を担当していた中道氏は、2012年4月に東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)の広報部門に転出。
※2:京都大学物質−細胞統合システム拠点(WPI-iCeMS)の研究推進グループ内に、「科学コミュニケーショングループ」がある

・全学的取り組み(ブランディング)
・学外有識者・メディア等との連携
・学内における継続的資金援助







MIT News Office

MIT News

 

WEB調査:明確な組織、教育プログラムのある国立大学法人事例
(一部)

学内外連携強化

○SAFnetひろば事業:
 事業推進をとおした関係づくり
○サイエンスカフェforScience Cafe:
 福岡県下のサイエンスカフェ実施者の交流
○「日本サイエンスコミュニケーション協会」
 設立総会への出席

 

5.終了後の発展

○リサーチコアの立ち上げ(準備中)
○「日本サイエンスコミュニケーション協会」福岡地域連絡員引受、福岡支部設立準備
○国立科学博物館との科学コミュニケーション講座開催
○九州サイエンスコミュニケーション連絡会の立ち上げ

九州大学におけるサイエンスコミュニケーションの推進室または支援室を設置すべき時期がきている。本研究の知見をもとに、今後はリサーチコアを中心として、より具体的なシステムと人員配置を考え、全学に働きかけていく。

 
研究課題:地域社会貢献型の科学情報発信と双方向のコミュニケーション創生に関する
     開発研究プロジェクト
研究組織:高等セ、比文、博物館 審査部門:学際・複合・新領域(科学教育)
採択年度:H23 整理番号:23401 
種  目:E-1タイプ(人文・社会科学及び基礎科学分野の支援) 
代表者 :副島 雄児(高等教育開発推進センター教授

フレームが表示されていない場合はこちら