ブドウ新品種 'BKシードレス' の高品質果実生産
のための栽培管理システムの構築
研究代表者:酒井かおり
(農学研究院)

研究の背景

 九州大学で育成したブドウ新品種'BKシードレス'は,栽培に必要な労力が少ないことから生産者に優しく,さらに,既存の品種にはない新しい食味の種子なし果実を生産できることから,消費者に嬉しい品種といえます.
 'BKシードレス'の高品質果実を安定して生産するためには,'BKシードレス'の優れた性質を活かすための栽培管理システムの構築が必要です.




味を数値化することができる味覚センサーや糖度計を用いて果実の食味を比較したところ,'BKシードレス'は他の市販品種よりも強い甘みと,控えめな酸味をもつ新しい食味のブドウであることが明らかになりました.

 

果皮着色および食味を向上させる栽培技術

 ブドウ果実の品質評価項目には,食味(甘み,酸味,渋味等)や形態(果皮色,果粒の大きさ等)等があります.ブドウ果皮の着色には,果実成熟期の適度な気温の低下が必要であるため,温暖化等の影響による着色不良が懸念されています.
 樹皮の一部を環状に剥ぎ取る環状剥皮(かんじょうはくひ)処理は,葉で合成された糖や様々な代謝産物が幹や地下部に運ばれるのを防ぎ,果実への蓄積を促します.果皮着色を促進することを目的として,'BKシードレス'に環状剥皮処理を行ったところ,早期に着色し,より甘い果実を生産できることが明らかになりました.
 この技術を利用すると,果実品質の向上および収穫期の長期化が可能になり,果実の商品価値の向上およびブドウ生産者の労力分散が可能になります.





環状剥皮処理が樹体内の物質の流れに及ぼす影響

 



環状剥皮処理が果皮着色および食味に及ぼす影響

 

果皮色および冷蔵保存が 'BKシードレス' 果実の食味に与える影響

 味覚センサーによる分析により,果皮が黒紫色の果実は赤紫色の果実よりも酸味が少なく,濃厚な味であること,1週間冷蔵することにより酸味は減少し,濃厚さが増すことが明らかになりました.
 果皮色や冷蔵保存によって,消費者の好みにあった果実を供給することができます.

 


'BKシードレス'の実用化に向けた取り組み

 'BKシードレス'の実用化に向けて,九州大学の研究者,ブドウ生産者および流通・加工業者等からなる'BKシードレス'栽培利用研究会を2010年に設立しました.2011年からは'BKシードレス'栽培利用研究会に参加しているブドウ生産者の協力のもと,福岡県を中心に第1次現地試験栽培を開始しました.
 本研究の成果は,ブドウ生産者による試験栽培や流通・加工業者による販売や食品加工で活用されています.

 

 

研究課題:ブドウ新品種'BKシードレス'の高品質果実生産のための栽培管理システムの構築
研究組織:農、農学部附属農場、生物資源環境科学府、農学部 審査部門:理工農系
採択年度:H22 整理番号:22411 種目:E-2タイプ(人文・社会科学及び基礎科学) f枠
代表者 :酒井かおり(農学研究院 助教)

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