九州大学は、100年以上の年月にわたり、さまざまな学問領域を扱う日本の基幹総合大学として発展をしてまいりました。その歴史の中で培われてきた学風は、専門領域を超えた分野間の有機的な協力を大切にするものです。領域間・分野間のつながりをつくりだすことによって、学問を進歩させる新たな研究が生まれ、そこから、人々の交流が始まり、人材の教育が活性化し、その学術的成果を社会に還元していくための実践へと繋がって参りました。

今回、九州大学がお届けする「ふくおかをしあわせにするデザイン」展は、多岐にわたる領域を融合する学問をあつかう、二つの部局の協力によって実現しました。その一つが、大学全学の学術標本・資料を扱うミュージアムである「総合研究博物館」。もう一つが、技術と社会との多様な関係をデザインする「大学院芸術工学研究院」です。

大学におけるミュージアムは、さまざまな教育や研究の中で集められた標本・資料を整理し、その教育・研究の成果をわかりやすく広く社会へと提供し、学問の価値を最大化する役割をもっています。ミュージアムは、大学と社会との接点を担う役割をもち、世界各国の大学においてもその存在がますます重要になってきています。また、日々進歩し変化していく学問に対して、その研究・教育の事実を裏付ける学術資料を集約・保存し、学術的なコンテキストを展示などの実践的な活動によって伝え、次世代の教育・研究へ活かすという、時を超えた活動を行っています。

また、芸術工学研究院が理念とするデザインの教育・研究もまた、人文・社会科学から、科学技術、そして芸術的感性といった広範にわたる分野を統合し、それらを社会に活かすための学問です。近年、デザインの重要性は学術界および産業界において世界でも広く認知され、国内外の大学においてデザインスクールの新設が相次いでいます。この分野における日本の先駆けであった九州芸術工科大学を起源とする芸術工学研究院を有していることは、九州大学の大変重要な特色の一つです。

この総合研究博物館と芸術工学研究院の協力による展示によって、九州大学からあらたな社会をつくりだすつながりが生まれることに期待します。これから国際的なユニバーサル都市・コンテンツ産業都市として発展していく「ふくおかのしあわせ」を、この展示を契機に来場者のみなさんと共に考え、そこからうまれた新たな知見を、本学の活動を通じて福岡から広く世界へと還元していきたいと思います。

九州大学総長 久保 千春