このたび、九州大学大学院芸術工学研究院は、本学総合研究博物館との共同企画といたしまして、「ふくおかをしあわせにするデザイン」を開催いたします。

科学技術の進展は、私たちの生活を豊かにしました。生命科学や医療機器の発展は長寿を可能とし、また多機能を集約した携帯電話は私たちのくらしを便利にしてくれています。しかし、ものの豊かさ便利さは、現代社会に新たな課題を与え、人びとの志向を多様化しつつあります。そのような中で、ものの豊かさから心の豊かさを求める人が多くなってきていることも事実であります。人びとのくらしやしあわせのあるべき姿を見つめ直すことで技術のあり方を示し、その思想をもってアイデアを実現していくことは、デザイナーのたいせつな役割です。21世紀の社会では、科学技術に新たな価値を与えることで社会のしくみを変えるイノベーションの創造と発信が求められています。そのためには、本研究院が約半世紀にわたって実践してきた「デザイン思考」が必要です。

本展は、このような芸術工学の特長を生かし、「ふくおか×しあわせ×デザイン」をテーマに、たくさんのデザインをとおして、皆さんの「しあわせ」にアプローチします。本研究院ならではといえる、「建築」や「工業デザイン」をはじめ、「ゲーム」、「映像」、「参加型の芸術表現」、「音のデザイン」など、幅広い分野の展示を行っています。会期中、多彩でライブ感あふれる企画として、展示物を使ったデモンストレーションや、来場者と一体となったギャラリートークなど、皆様に楽しんでいただけるイベントも予定しています。本展をとおして、「しあわせって何だろう?」、「デザインは私たちのしあわせのために何が出来るの?」といったことを、ふくおかの街を愛する皆様といっしょに、考えることができれば幸いです。

九州大学大学院芸術工学研究院長 安河内 朗