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凍らせて壊す
 組織を凍結すると、氷の形成により細胞が傷つき死んでいきます。これを利用してがん(癌)などを取り除く方法を凍結手術といいます。

 左の図は、二重になった細い管に液体窒素や高圧ガスを流して、先端だけを冷却する器具でクライオプローブといいます。
 これをがんに直接突き刺して冷却すると、周囲に氷の玉(アイスボール)ができます。−40℃以下になった領域では細胞が死滅することがわかっています。
 しかし、体の中でできているアイスボールは見えません。そこで、それを監視したり温度を予測する技術が重要です。
 この技術が普及すると、お腹に小さな穴を開けるだけでがんの手術ができるようになります。

凍らせて保存する

 凍結による損傷から細胞を保護すると、細胞を長期間保存することができます。ばらばらにした細胞は小さいので瞬間的に全体を凍らせることができ、うまく保存ができます。
 一方、臓器のような大きいものでは、中の方はゆっくりしか冷えず部分的に水分だけが凍ってゆくので、組織が脱水収縮して、氷などの影響で傷を受けます。また、組織はさまざまな細胞から成り、構造も複雑です。

 さまざまな組織や臓器がうまく凍結保存ができるようになれば、移植の時に凍結して臓器を運搬するなど、医療に大きく貢献できます。

作成:高松 洋 九州大学大学院 工学研究院 機械工学部門

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