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バイオ人工肝臓
 わたしたちの体の中を見ていくと、皮膚、骨、脳、心臓、腸などさまざまな臓器・組織が存在します。そして、それぞれの臓器・組織はわたしたちが生きていくうえで必要な働きを分担して行っています。
 この臓器・組織をさらに細かく分けてゆくと、細胞と呼ばれる小さな生命体に行き着きます。細胞は一つの大きさが約0.01mm程で、わたしたちの体は実に約60兆個の細胞から構成されています。
 細胞は非常に小さいながらも、臓器・組織としての機能を持っています。そして、このような細胞を体の外でわたしたちの生活に役立つよう利用する技術のことをバイオテクノロジーと呼んでいます。
 実用化が期待されるバイオテクノロジーの例として、医療への応用があげられます。下に示したのは悪くなった肝臓を治療するためのバイオ人工肝臓です。
 肝臓は体の中での主要な代謝臓器の一つであり、わたしたちが生きていくうえで必要な数百種類の化学反応を行う、生体内での化学工場です。したがって肝臓の働きが低下すると、わたしたちは生命の危機に直面します。そのような際に肝臓の働きを助ける治療法として期待されているのが、バイオ人工肝臓なのです。


 バイオ人工肝臓の容積は1Lで、この中に合計で約100億個の肝臓の細胞が充填されています。
 バイオ人工肝臓の中身は筒状のスポンジブロック(ポリウレタン発泡体)です。スポンジの小さな穴の中には、肝臓の細胞数百個から構成される直径0.1mmほどのボール状のミクロ肝臓が無数に固定化されています。スポンジブロックには、血液が流れる血管の代わりとなる流路(穴)が空けてあり、ここを血液が通過します。
 ミクロ肝臓は、流路を通過する血液中の有害物質を無毒化し、また体にとって必要な物質を生産し、血液中に供給します。つまり、バイオ人工肝臓は体の肝臓の代わりに血液をきれいにする働きを持っているのです。
 バイオ人工肝臓は肝臓が悪いにもかかわらず、肝移植を受けることができない患者さんのために新しい治療法として、1日も早い治療法としての確立が期待されています。

作成: 梶原稔尚 九州大学大学院工学研究院 化学工学部門
      水本 博  九州大学大学院工学研究院 化学工学部門   

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