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砂漠化と砂漠緑化
 アジア温帯の乾燥した地域では近年砂漠化が進んでいます。砂漠とは、乾燥・半乾燥地域で、強い日差しと水不足のため植物が育たず、人間をふくめた生命の活動が極端にかぎられている土地のことです。牛・馬・羊をたくさん放牧したり、森林を切りすぎたりしたことなどよって土地が悪化したことが原因といわれています。砂漠はもとにはもどせませんが、半砂漠化した乾燥地をもとにもどすことを砂漠緑化とよんで、砂漠化が進んでいる地域では現在さまざまな研究や事業が進んでいます。
乾燥地の面積は地球上の全陸地の32%
  
そのうちの
・20%は極乾燥地
・32%が乾燥地
・のこりの48%が半乾燥地。

中央アジア調査地域
砂漠植物に花粉を運ぶ昆虫
 砂漠に緑をとりもどす基礎研究として九州大学農学研究院では、1995年より2007年までシルクロードにそって中国北西部(甘粛省、青海省、新彊ウイグル自治区)から中央アジア(カザフスタン、キルギスタン)、イランに計9回の海外調査をおこないました。砂漠・半砂漠地域の植物に花粉を運んで受粉させている有力な昆虫類を探し、その種の正確な学名をあきらかにし、生態を調べようとするものです。
中国新彊ウイグル自治区
中国新彊ウイグル自治区
中国新疆ウイグル自治区ウルムチ郊外での調査
野生チューリップの原産地(中央アジア)
ハナバチの集団営巣地の調査 カザフスタン
ムユンクム砂漠 カザフスタン

野生ハナバチ類
 砂漠・半砂漠地域の植物に花粉を運ぶ有力な昆虫類のうち、とくに重要なものは、ミツバチの仲間のハナバチ類です。花粉を集めるために特別な毛がはえ、蜜を吸うために舌が長くのびるように進化しています。大部分は地中に巣を作り、単独で生活しています。一般的に生物は熱帯地域に種が多いのですが、ハナバチ類は温帯の乾燥地域に多いことが知られています。九州大学の海外調査では花粉を運んで受粉させる野生ハナバチ類を約3万個体採集し、巣などの生態調査をおこない、花粉を運ぶ有力なハナバチを見つけ、多くの新種を発見しています。

 ヒメハナバチ類
ヒメハナバチ科
Andrena

コハナバチ科
Halictus

半砂漠地域のキク科植物
Chondrilla brevinotris の花粉を運ぶハナバチ
Andrena (Euandrena) almas

Andrena (Euandrena) almasの巣の構造調査
中国新彊ウイグル自治区

作成: 多田内 修 農学研究院・動物昆虫学講座・昆虫学研究室

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