4-01
九州大学が世界最大のカイコ系統を保有する理由
 戦前には国の方針としてカイコを育てる養蚕業が発展し、日本中でカイコを育てる教育や研究が発達しました。下の日本地図にはそのおもな大学をしめしました。
 九州では年に5回もカイコを育てることができ、寒い地方(年に2−3回)にくらべて研究が進みやすく、九州大学ではカイコの遺伝研究が発展しました。
 現在、世界最大数のカイコの系統(突然変異体)を持っています。


九州大学大学院農学研究院遺伝子資源開発研究センター

センターにおけるおもな学術研究
 ・遺伝子資源の収集・保存
 ・保存技術の開発
 ・遺伝子資源の検定・評価
 ・新しい遺伝子資源の開発
 ・用途開発
世界各地から収集された突然変異体の一例
(拡大図はこちら

液体窒素による長期凍結保存の開発

遺伝子組換えカイコの保存と提供

衣料素材開発への貢献

カイコのからだの名称と頭部の微細構造
 標準とされるカイコのからだの名称をしめします。眼状紋は眼のようにみえることから命名されています。しかし、本当の眼(下の拡大図で説明)ではありません。半月紋、星状紋は、それぞれ月と星型であることから命名されています。


 眼は黒くみえているところです。
 触角は種々のセンサーとして、小鰓は桑の匂いのセンサーとしてはたらき、吐糸管は糸を吐く専用の口です。


 下の図は、さらに拡大してみることができる電子顕微鏡で撮影した、カイコの顔です。
 上の頭部の拡大写真との対応がわかるかな?


カイコは桑しか食べない
 ふつう昆虫は植物の葉を食べて成長します。いろいろな種類の葉を食べる昆虫と特定の植物しか食べない仲間がいます。特定の植物しか食べない昆虫を狭食性昆虫とよびます。


人工飼料の開発
 桑しか食べないカイコの代用飼料として人工飼料が開発され、いまでは桑のない冬や、桑のない国でもカイコが飼育されています。桑の乾燥粉末とおもに必要な栄養素が寒天で固められ、市販されています。右写真は人工飼料を食べているカイコです。


カイコは野外にはいない
 カイコは漢字で家蚕とかきます。カイコは自然界のある虫を人間が飼育しやすいように選抜を加えた改良種とかんがえられています。牛や馬、ヤギなどは野外へ放しても生きていくことができます。しかし、カイコは死んでしまいます。
 現在、もっとも祖先種にちかい昆虫といわれるのが右のクワコという虫です。桑の葉を食べます。
天敵(トリ、ハエ、ハチ)から身を守るため擬態をしているところです。

作成: 伴野 豊 農学研究院・遺伝子資源開発研究センター

フレームが表示されていない場合はこちら