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昆虫に病気をおこすとっても小さな生物たち
 わたしたちは、風邪をひいたり、虫歯になったりします。これは病気ですね。昆虫もおなじように病気にかかります。その原因はとても小さい生物(微生物)で、いろいろな種類があります。とても小さいので、普通その一つ一つは目でみることはできません。たとえば、ヒトを富士山(3776m)ぐらいの大きさにしても、細菌は米粒の大きさ(5mm)、カビの胞子は大豆ぐらいの大きさ(8〜12mm)にしかなりません。こんなに小さな生きものでも、たくさん集まると目(肉眼)でみえるようになります。

もし、細菌やカビの胞子が大豆やお米のように目にみえる大きさだったら?



一つ一つが微生物(顕微鏡写真)
カビ(糸状菌)
カビ(微胞子虫)
細 菌(バクテリア)
カビ(糸状菌)
カビ(微胞子虫)
細 菌(バクテリア)
たくさん集まると肉眼でみえます!

昆虫はどのようにして病気になるの?〜カビによる昆虫の病気〜
 昆虫を病気にするカビはたくさん知られていますが、そのなかでも、害虫防除に利用されている、ミイラになる病気(硬化病)をおこすものを紹介します。
 この病気は、カビの胞子が昆虫の皮膚に付着して発芽し、体内へと侵入していくことから始まります。昆虫体内では、短い菌糸がどんどん増えて、最後には昆虫を殺してしまいます。その後も菌糸は増えつづけ、体内の水分を奪っていくので、死体はかたくミイラ化します。やがて菌糸は昆虫の表面でたくさんの胞子をつくります。
 胞子はカビの種類によって白、黒、緑、赤などの色をもち、粉をふいた
ように死体の表面をおおうので、 これらの病気は死体の色から それぞれ
「白彊病(はっきょうびょう)」、「黒彊病(こっきょうびょう)」などともよばれます。 

※ 彊 = 死んでも腐らずミイラになる    

メタリジウム属のカビ(黒彊病菌)の生活環

害虫をおそうカビ
 昆虫に病気をおこすカビは、ふつうはヒトや動物には無害です。また、その種類によって、病気にする昆虫が決まっています。そこで、農作物や森林の害虫を退治するために、カビが利用されています。
 コウモリガの幼虫に生じるカビは、中国では冬虫夏草として、不老長寿の秘薬とされています。



作成:清水 進  農学研究院・生物的防除研究施設・天敵微生物学研究室
   青木 智佐 農学研究院・生物的防除研究施設・天敵微生物学研究室
   飯山 和弘 農学研究院・生物的防除研究施設・天敵微生物学研究室

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