九州大学の生薬標本

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1. ニンジン Ginseng Radix
 20×30 cm、生薬標本
 日本薬局方収載生薬。ウコギ科の多年生草本オタネニンジン(Panax ginseng)の細根を除いた根、または軽く湯通ししたもの。人参は、中枢神経系、特に高次中枢系に対して特異な作用を示す。代表的な生薬であり、健胃消化薬、止瀉整腸薬、鎮痛鎮痙薬、保健強壮薬とみなされる多数の漢方製剤に配合される要薬である。成分としては、人参サポニン(ジンセノシドRx)を約5%含む。

2. サイコ Bupleuri Radix
 10×20 cm、生薬標本
 日本薬局方収載生薬。セリ科の多年生草本ミシマサイコ(Bupleurum falcatum)の根。静岡県や神奈川県の野生のものを集荷したものが好評であったので、三島柴胡と呼ばれた。現在では日本の野生品の市場性はなく、外国でも野生資源の枯渇の恐れがあり、栽培化が進んでいる。漢方処方用薬であり、精神神経用薬、消炎排膿薬、痔疾要薬、保健強壮薬とみなされる処方に配合される。代表的なサイコ配合漢方薬:乙字湯、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、加味逍遥散

3. ダイオウ Rhei Rhizoma
 10×20 cm、生薬標本
 日本薬局方収載生薬。タデ科の壮大な多年生草本 Rheum 属植物(茎は直立し約2m)の根茎。アントラキノン類を約5%含有し、瀉下作用を有する。緩下、消炎、健胃整腸を目的として利用されるが、特に緩下については最も重要な生薬のひとつである。漢方では駆於血の目的で使う。代表的なダイオウ配合漢方薬:乙字湯、大黄甘草湯、三黄瀉心湯

4. ケイヒ Cinnamomi Cortex
 10×20 cm、生薬標本
 日本薬局方収載生薬。クスノキ科のCinnamomum cassiaの樹皮または周皮の一部を除いたもの。産地、品質により多種の名称(広南桂皮:中国産、東興桂皮:中国南部からベトナム産、安南桂皮:ベトナム産)がある。精油を1.0〜3.5 % 含む。漢方処方用薬であり、かぜ薬、鎮痛鎮痙薬、保健強壮薬、婦人薬とみなされる処方に高頻度で配合される。代表的なケイヒ配合漢方薬:安中散、桂枝加葛根湯、小青竜湯、柴胡桂枝乾姜湯。 また、薬用のほかに菓子類の矯味剤としても用いられる

5. カンゾウ Glycyrrhizae Radix
 10×20 cm、生薬標本
 日本薬局方収載生薬。マメ科の多年生草本のカンゾウ(Glycyrrshiza uralensisまたはG. glabra)の根及びストロンでときには皮を除いたもの。中国の内蒙古、甘粛、寧夏回教自治区、新疆の各地、ロシア、イラン、パキスタンに産し、わが国へ輸入されている。薬用とされるのは中国産東北甘草及び西北甘草である。そのほか抗アレルギー薬、肝炎治療薬であるグリチルリチン酸製造原料とされる。また、医療用のみならず甘味料としても味噌、醤油、菓子などに用いられる。

6. サフラン Crocus
 10×20 cm、生薬標本
 日本薬局方収載生薬。アヤメ科のサフラン (Crocus sativus)の柱頭。紀元前からヨーロッパで香味料、薬用として用いられてきた。わが国では熊本、鳥取、大分(日本一の産量)の諸県で栽培される。生薬500gは、約60000個の柱頭に相当する。マウスにおいてエタノールにより障害された学習、記憶過程の改善作用が認められている。

7. カンタリス Cantharis
 10×20 cm、生薬標本
 ツチハンミョウ科のマメハンミョウ(Epicauta gorhami)やミドリゲンセイ(Lytta属)などの乾燥虫体。古代ヨーロッパでは、潰瘍、腫物の治療に多用され、その他、慢性の咳、鬱病、知覚鈍麻、下痢などにも用いられた。本品を乾燥したものはカンタリジン(猛毒成分)0.6 % 以上をを含む。本品は不快な刺激性の臭いがあり、味は僅かに辛 い。皮膚刺激薬として外用され、毒性が強いため内用されることはない。
*写真は、ミドリゲンセイ

8. コベン Pantherae Penis Et Testis
 30×30 cm、生薬標本
 ネコ科トラ(Panthera tigris)の陰茎および睾丸を乾燥したもの。強精薬として用いる。鹿鞭:シカの陰茎および睾丸、海狗鞭:オットセイの陰茎および睾丸、広狗鞭:広州産のイヌの陰茎および睾丸も同様の効果を期待して利用される。

9. ロクジョウ Cervi Parvum Cornu
 30×30 cm、生薬標本
 シカ科マンシュウアカジカ(Cervus elaphus)およびマンシュウジカ(Cervus nippon)の雄のまだ角化していない、もしくは僅かに角化した幼角を乾燥したもの。強壮、疲労回復・強精・骨形成促進・止血・利尿・消腫作用があり、低血圧症、自律神経失調症、更年期障害等に用いられる。

10. トウチュウカソウ Cordyceps
 10×20 cm、生薬標本
 2005年4月2日に田中宏幸より中国(大連)で採取。コウモリガ科のHepialvs armoricanusなどの幼虫にバッカクキン科フユムシナツクサタケ (Cordyceps sinensis)が寄生して子実体を作り、その子実体と寄生主の幼虫の死体を乾燥させたもの。結実部を含めた子実体の形態には、「こん棒型」「タンポ型」「ミミカキ型」「ハナヤスリ型」などのいくつかのタイプがあり、その色彩はオレンジ色や紫、黄、茶など様々である。子実体の長さは数ミリから数センチのものが多く、長いものでは、90 cmのものもある。強壮、鎮静、鎮咳薬として用いる。

11. ジャコウ Moschus
 30×30 cm、生薬標本
 神農本草経の上品に収載。シカ科ジャコウジカ(Moschus moschiferus)の雄の麝香腺分泌物を乾燥したもの。ヒマラヤ山麓、中央アジア、チベット、南シベリア、アッサム、雲南に生息していて、雌を求めて発情し、生殖腺(雄の香嚢)に麝香が充満する秋に狩猟される。現在ではワシントン条約(希少動物保護に関する国際条約)で捕獲禁止となっている。興奮、鎮痙、鎮静、排膿、解毒薬として、うわごと、小児の癇、神経衰弱症、心腹痛、打撲損傷等に用いる。高級香水原料。

12. リュウコツ Fossilia Ossis Mastodi
 30×30 cm、生薬標本
 日本薬局方収載生薬。大型哺乳動物の化石化した骨で、主として炭酸カルシウムからなる。漢方処方用薬であり、精神神経用薬とみなされる処方に配合される。リュウコツ配合漢方薬:桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯

13. センソ Bufonis Venenum
 30×30 cm、生薬標本
 ヒキガエル科のシナヒキガエル(Bufo bufo gargarizansまたはB. melanostictus)の毒腺からの分泌物。配合剤の原料とする(六神丸)。蟾酥は古くから強心薬、鎮痛薬、解毒薬として、心臓疾患、歯痛、切り傷、すり傷、止血、腫れ止め等にも用いられていた。神農本草経の下品(下薬)に収録されており、作用が強く、長期連用はしない。

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