九州大学の化石標本

1.化石 画像をクリックすると詳細な図がご覧いただけます。
1. ストロマトライト
 stromatolite limestone
 高さ20 cm、先カンブリア時代(約17億年前)、松下・高橋・相原コレクション
 オーストラリア北部準州カーペンタリア湾岸産。ストロマトライトは、シアノバクテリア(ラン藻)が浅海で長い時間をかけて作った構造物です。約30億年前から海中でシアノバクテリアによる光合成が行われるようになり、大気中に酸素を供給した結果、地球の大気組成は現在のように酸素が多くなったと考えられています。展示標本はストロマトライトを縦に切った断面で、薄い層が積み重なって成長していることがわかります。

   
2. 三葉虫
 Metacryphaeus caffer Reed
 体長5.5 cm、古生代デボン紀中期(約3億8000万年前)、南アメリカ産無脊椎動物化石標本
 ボリビア共和国産。三葉虫は、現生の「生きた化石」カブトガニに近縁の海生節足動物と考えられています。三葉虫の名前の由来は、体が中軸部と左右の側葉部に分かれていることによります。カンブリア紀初め(約6億年前)に出現し、古生代を通じて大繁栄しましたが、ペルム紀末(約2億5000万年前)に絶滅しました。展示標本は、目の発達した三葉虫で、砂や泥の海底を這い回っていたと考えられます。

3. 腕足類
 Neospirifer condor (D’Orbigny)
 殻幅9 cm、古生代ペルム紀前期(約2億9000万年前)、南アメリカ産無脊椎動物化石標本
 ボリビア共和国(コパカバナ層群)産。腕足類は、外見が二枚貝(軟体動物)に似ていますが、実際には全く違う動物です(腕足動物として独立に分類されます)。有明海に生息する「生きた化石」シャミセンガイが、現生の腕足類の代表です。カンブリア紀初め(約6億年前)に出現し、古生代を通じて繁栄しましたが、現在は衰退しています。展示標本は、古生代後期に繁栄したスピリファーという腕足類の仲間で、海底表面でじっとして生息していたと考えられます。

4. 巻貝
 Pleurotomaria yokoyamai Hayasaka
 殻高22 cm、古生代ペルム紀中期(約2億7000万年前)、理学研究院所蔵化石標本
 岐阜県大垣市赤坂町金生山(赤坂石灰岩)産。現生の「生きた化石」オキナエビスという巻貝の祖先にあたる化石です。岐阜県の赤坂石灰岩は、後期古生代のサンゴ礁だったところで、20cmを超す大型の巻貝や二枚貝が産出することで有名です。現在のオキナエビスはあまり浅い海で見ることはできませんが、古生代には浅いサンゴ礁に住んでいたことがわかります。展示標本の殻口の切れ込みは現生のオキナエビスに比べやや浅くなっています。

5. フズリナ(石灰岩)
 Yabeina globosa (Yabe)
 10×6×4 cm、古生代ペルム紀中期(約2億7000万年前)、理学研究院所蔵化石標本
 岐阜県大垣市赤坂町金生山(赤坂石灰岩)産。フズリナは、有孔虫という単細胞生物(アメーバの仲間)で、紡錘形の殻を作ります。石炭紀前期(約3億4000万年前)に出現し、世界中のサンゴ礁に分布して様々な種類に分かれましたが、ペルム紀末(約2億5000万年前)に絶滅しました。後期古生代の地層の時代を決める示準化石として重要です。展示標本はフズリナを含む石灰岩で、岩石表面に見られる径1cm程度の丸い粒状のものがフズリナ(Yabeina globosa)です。

6. フズリナ(薄片)
 Yabeina globosa (Yabe)
 殻長0.7 cm、古生代ペルム紀中期(約2億7000万年前)、理学研究院所蔵化石標本
 岐阜県大垣市赤坂町金生山(赤坂石灰岩)産。フズリナの研究には岩石を約0.03 mmの薄さにした薄片を用い、殻の内部構造を詳しく観察して種の記載分類を行います。展示標本は、フズリナ(Yabeina globosa)を縦に切った断面を見ることができ、単細胞生物(アメーバの仲間)でありながら非常に見事な殻を作っていたことがわかります。

7.アンモナイト
 Pachydesmoceras pachydiscoides Matsumoto
 最大殻径65 cm、中生代白亜紀チューロニアン(約9200万年前)、松本達郎コレクション
 北海道中川郡中川町(上部蝦夷層群)産。アンモナイトは、軟体動物頭足類(タコやイカの仲間)で、現生の「生きた化石」オウムガイに近縁です。古生代デボン紀(約4億1000万年前)に出現し、中生代に大繁栄をしましたが、白亜紀末(約6500万年前)に絶滅しました。地層の時代を決める示準化石として重要です。展示標本は非常に大型のアンモナイトですが、住房(軟体部が入っていた部分)が欠けていることから、生きていた時にはもう一回り以上大きかったと考えられます。表面には非常に複雑な縫合線(殻内部の小部屋を仕切る壁と殻との合わせ目)が見られます。

8. アンモナイト
 Acanthoceras cornigerum Crick
 最大殻径14 cm、中生代白亜紀チューロニアン(約9200万年前)、松本達郎コレクション
 北海道三笠市桂沢(蝦夷層群三笠層)産。展示標本は、北海道産の白亜紀アンモナイトで、殻表面に棘のようなものが発達する種類です。北海道は、保存状態のよい様々な種類の白亜紀アンモナイトを多産することで有名です。九州大学は、アンモナイトの研究で世界的に有名な松本達郎名誉教授が北海道を中心に長年にわたって収集してこられた標本を多数所蔵し、アンモナイト研究の拠点となっています。

9.アンモナイト断面標本
 Gaudryceras tenuiliratum Yabe
 最大殻径7 cm、松本達郎コレクション
 ロシア連邦サハリン州ナイブチ産。アンモナイトを縦に切った断面を見ると、殻の内部がいくつもの小部屋(隔室)に分かれています。アンモナイトは、隔室中のガスの浮力を利用して姿勢を保っていたと考えられます。軟体部は最後の部屋(住房)に入っており、成長にしたがって軟体部が前進し、隔室が増えていったことがわかります。オウムガイも隔室を持っており、アンモナイトに似ていますが、隔室を仕切る壁(隔壁)の構造はずっと単純です。

10.二枚貝(イノセラムス)
 Inoceramus orientalis Sokolow
 殻高11 cm、中生代白亜紀チューロニアン(約9200万年前)、松本達郎コレクション
 北海道中川郡中川町豊里(蝦夷層群)産。イノセラムスは、薄い殻を持った大型の二枚貝で、50cm以上の大きさになる種類も知られています。白亜紀(約1億4000万年前〜6500万年前)に世界中の海で繁栄しましたが、アンモナイト同様、白亜紀末に絶滅しました。海底表面などに付着して生活していたと考えられています。イノセラムスは、日本各地の白亜紀の地層から産出が知られており、白亜紀の示準化石として重要です。

11.厚歯二枚貝
 
Vaccinites sp. Cf. marticensis (Douville)
 殻高11 cm、中生代白亜紀コニアシアン?(約8700万年前?)、示準化石教材標本
 アラブ首長国連邦アブダビ首長国産。厚歯二枚貝は、大きい方の殻がカップ状になり、小さい方の殻がフタのようになった非常に特異な形の二枚貝で、全体的な外形は単体サンゴに似ています。カップ状の殻でサンゴ礁などの海底表面に固着生活をしていたと考えられています。厚歯二枚貝の中には、群生してまるでサンゴ礁のような構造をつくっていたものも知られています。展示標本は、アブダビ石油(株)から九州大学に寄贈されたものです。

12.貨幣石(カヘイセキ)
 
Nummulites sp.
 殻径3〜4 cm、新生代古第三紀始新世?(約4000万年前?)、示準化石教材標本
 アラブ首長国連邦アブダビ首長国産。貨幣石は、有孔虫という単細胞生物(アメーバの仲間)で、丸くて平べったいコインのような形の殻を作ることからその和名が付けられています。古第三紀暁新世(約6000万年前)に出現し、漸新世(約2500万年前)に絶滅しました。古第三紀の地層の時代を決める示準化石として重要です。展示標本は径4cm程度にもなる大型の貨幣石で、アブダビ石油(株)から九州大学に寄贈されたものです。

13. サメの歯
 Oxyrhina hantelli Agassiz
 長さ7 cm、新生代新第三紀鮮新世(約200〜500万年前)、示準化石教材標本
 イギリス連邦サフォーク産。サメの歯の化石は多くの場合、歯だけが単独で産出しますが、これは新しい歯が絶えず成長し古い歯が脱落するためと考えられます。鮮新世の地層からはカルカロドン・メガロドンという絶滅した巨大なサメの歯の化石(歯の長さ10cm以上、推定全長12m以上)が産出することがありますが、展示標本もそれにひけをとらないくらい非常に巨大なサメであったことをうかがえます。

14. 二枚貝
 
Chlamys ashiyaensis (Nagao)
 殻高6.5 cm、新生代古第三紀漸新世(約3000万年前)、理学研究院所蔵化石標本
 福岡県北九州市芦屋(芦屋層群)産。北部九州には、日本海が開く直前の地層が広く分布しており、産出化石を用いて当時の環境についての研究が盛んに行われています。展示標本は、現在のホタテガイの仲間で、海底表面に付着して生活していたと考えられます。九州大学の学生実習の際に採集されたもので、化石がどのように岩石(砂岩)中に埋まっているかを見ることができます。

15.陸上植物(ヤシ)
 
Sabalites nipponicus (Krysch.)
 長さ40 cm、新生代古第三紀漸新世(約3000万年前)、理学研究院所蔵化石標本
 佐賀県旧杵島炭鉱(杵島層群)産。北部九州に分布する古第三紀の地層には石炭が含まれていることが多く、炭田として稼行されていました。石炭のほとんどは陸上植物起源であり、北部九州からはしばしば陸上植物の葉や木片、幹などが産出します。展示標本は、約3000万年前のヤシ科植物の葉の化石です。現在のヤシ科植物の多くが熱帯〜亜熱帯に生育していることから、当時の北部九州もそれに近い気候環境であったことがわかります。

16.カブトガニの足跡
 
Tachypleus tridentatus Leach:236×95 cm、新生代古第三紀始新世後期(約3500万年前)、理学研究院所蔵化石標本
 佐賀県武雄市北永野(相知層群芳ノ谷層)産。展示標本は、1985年に学生だった山田琢哉氏が卒業研究の際に採集したものです。当初は、この足跡を残したものの正体がわかりませんでしたが、大石・松隈・相原(1993)によって、カブトガニの足跡であると認定されました。前指が4本で後指が1本であること、左右の足跡が互い違いになっていないこと、左右の足跡の間に細い尾を断続的に引きずった跡が見られることなどの特徴が見られます。

17.地層剥ぎ取り標本(警固断層)
 
Kego Active Fault
 100×185 cm、新生代第四紀、福岡県
 今年3月20日の大地震は福岡市の北西40kmの玄界灘沖海底の地下で活断層が動いたために起こりました。福岡市の陸域にも「警固断層」と言う活断層があります。活断層とは過去に今回のような規模の大きな地震を繰り返し起こした断層のことで、将来も大地震を起こすと考えられております。
 活断層がどこにあるのか?何年間隔で活動しているか?最後に活動してからどれくらい経過しているのか(次の活動時期はいつか)?という疑問に答えてくれるのが「断層発掘調査」です。警固断層の発掘調査が平成8年と平成12年に福岡県と福岡市によって行われ、断層の通過位置、活動間隔が約15、500年、最新の活動が約13、000年前であることがわかりました。
 この標本は1996年に太宰府市大佐野において行われた福岡県による警固断層の断層発掘調査で得られた地層剥ぎ取り標本です。「地層剥ぎ取り標本」とは、地層断面に接着剤をぬり、その上に布をはりつけて、固化後に引き剥がしたものです。標本の地層は左右反転しますが地層の情報をそのまま保存することができます。この標本に示された断層は西側隆起の逆断層で、左横ずれも示しました。約3万年前以降の地層を2回切断および変形させている(つまり大地震を2回発生させた)ことが分かりました。

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