生物は水がないと生きていけません。芽を出し、花を咲かせ、種子をつける色々な場面で、植物の細胞の中の、水が入った大きな袋のような「液胞」に注目してみましょう。

1. 茎はどうして伸びるの?

チューリップの花は低温にあわないと、花の茎が長くなりません。左はずっと20℃において育てた球根、右は5℃に3か月くらいおいて、その後、20℃で育てた球根の様子です。一番下の写真は、球根の中の水がどこにあるのかを、MRIという装置で「切らないで」見たものです。左と右で、どう違うかわかりますか?



5℃においていた球根や花茎ではデンプン(紫色に染まっている)が分解されているのが分かりますね。
またMRIでは球根が白く見えています。これは「動きやすい水」が増えていることを示しています。
寒い冬が過ぎて暖かくなると、球根の中のデンプン粒がすぐに分解され始め、小さな糖になり、花茎に送られます。液胞にこの糖が貯まっていくと、水もどんどん入ってきます。細胞壁は縦に伸びやすい形をしているので、水でふくらんだ液胞は縦に力が加わり、茎はどんどん伸びていくのです。


パネル作成者: 井上 眞理(農学研究院植物資源科学部門)