3. 種子はどうして長生きできるの?

縄文時代の遺跡やツタンカーメンのお墓から見つかったハスやエンドウの種子は、2千〜3千年間も「休眠して」その後、発芽して花を咲かせました。種子はどうして長生きすることができるのでしょう?



種子の胚の細胞では、液胞が水を失い始めると、中にはタンパク質がたくさん貯まってきます。細胞質にも、色々な「膜」を守る蛋白質が作られてきます。また、胚乳や子葉などでは、デンプンや油などもたくさん貯まってきます。これが、発芽のためのエネルギーとなるのです。チューリップの球根の中のデンプンも同じですね。でも、球根と違って種子の中には水が10%くらいしかありません。種子は水が少ないから長生きできるのです。この「動きにくい水」の状態が大事な膜を乾燥から守っていることがわかりました。
 
でも、種子が乾燥すると死んでしまう植物もあります。ドングリやアボカドの種子を乾かして土に埋めてみてください。---林の中のドングリの仲間は、湿った土の中にもぐりこんだ種子だけが発芽することができるのです。
 
種子の中には不思議なことがたくさんつまっています。
皆さんが食べるお米は、左のようなきれいな胚(芽や根が出てきます)と胚乳をもった玄米がもとになりますが、右の玄米は、色も形も変ですね。これは、刈り取り前に降った長雨のため、穂の上で発芽して、その後また乾いた玄米です。そのため、胚がなくなり、胚乳が少し分解されている種子です。
 
美味しいお米を作るために、穂発芽する「休眠しない」種子を、調べているところです。


パネル作成者: 井上 眞理(農学研究院植物資源科学部門)