アシの葉の化身の逸話のあるエツはカタクチイワシの仲間で日本では有明海だけに生息する貴重な魚です。春から夏にかけておもに筑後川の感潮域に入ってきて産卵する回遊魚です。筑後川では時期を限って、川でとったエツの刺身や煮つけなどを川の上で味わうことができます。
なぜ、筑後川だけで子供が育つのでしょう?
 エツの卵やふかしたばかりの稚魚は高い塩分に弱いので有明海に流れ出ないことが必要です。その条件を満たすのが広い感潮域をもつ筑後川なのです。
感潮域ってどんなところ?
 川や湖の中で塩分の有無にかかわらず潮の干満によって水位が変化するところです。筑後川では河口から久留米市までの約25kmの範囲におよびます。有明海にそそぐほかの川では10kmもありません。
エツの卵
エツの稚魚(体長約6cm)
エツの幼魚(有明海に出た頃)
エツの成魚



 川の淡水が河口で海水と出会ったとき、そこで強いかき混ぜがないと淡水と海水は混じらず、川から流れてきた淡水は海水の上を流れていきます。これは海水の方が淡水より重いためです。満潮時に淡水の下にもぐり込むようにして河口から上流に上っていく海水を塩水クサビといいます。


作成者 松井誠一 まついせいいち (生物資源環境科学府附属水産実験所)  
及川信  おいかわしん  (生物資源環境科学府附属水産実験所)