塩分が多少混じっているところを含めて日本の淡水域に出現する魚類は約310種います。そのうち福岡県では今まで138種が確認されています。それらはおもに日本固有の種類と朝鮮半島を通じて大陸とつながった時期に大陸から九州に分布を広げた種類やその後、新しい種や亜種に分化したものなどいろいろです。とくに福岡県は海のようすのちがった有明海、玄界灘と瀬戸内海に囲まれ、それぞれの地域でちがう魚類相を示しています。近年はいずれの地方でも水環境の変化や移入種などによって絶滅が危ぶまれる種が増えています。
福岡県の淡水魚類
 最近の野外調査によりカジカ(回遊型)が県内全域から、カワバタモロコとヒナモロコが筑前地方から絶滅していることが確認されました。地方によって絶滅した種を含めてセボシタビラやアリアケシラウオなど18種類がなんらかの保護をしないと近い将来県内全域から絶滅する可能性が高い(絶滅危惧I,II)ことがわかりました。



種名
福岡県全域
豊前地方
筑前地方
有明地方
カジカ(回遊型)
絶滅
絶滅
絶滅
絶滅
セボシタビラ
絶滅危惧IA
分布しない
絶滅危惧IA
絶滅危惧IA
カワバタモロコ
絶滅危惧IA
情報不足
絶滅
絶滅危惧IA
ヒナモロコ
絶滅危惧IA
分布しない
絶滅
絶滅危惧IA
イシドジョウ
絶滅危惧IA
分布しない
絶滅危惧IA
分布しない
アリアケシラウオ
絶滅危惧IA
分布しない
分布しない
絶滅危惧IA
アリアケヒメシラウオ
絶滅危惧IA
分布しない
分布しない
絶滅危惧IA
クルメサヨリ
絶滅危惧IA
分布しない
絶滅危惧IA
準絶滅危惧
スナヤツメ
絶滅危惧IB
情報不足
絶滅危惧IB
情報不足
スジシマドジョウ小型種
絶滅危惧IB
分布しない
絶滅危惧IB
絶滅危惧IB
アカザ
絶滅危惧IB
絶滅危惧IA
絶滅危惧IB
絶滅危惧IB
トビハゼ
絶滅危惧IB
普通
絶滅危惧IB
普通
エツ
絶滅危惧II
分布しない
分布しない
絶滅危惧II
ニッポンバラタナゴ
絶滅危惧II
絶滅危惧II
絶滅危惧II
絶滅危惧II
カゼトゲタナゴ
絶滅危惧II
絶滅危惧II
絶滅危惧II
準絶滅危惧
ドジョウ
絶滅危惧II
絶滅危惧II
絶滅危惧II
絶滅危惧II
カジカ(陸封型)
絶滅危惧II
絶滅危惧II
絶滅危惧II
絶滅危惧II
タビラクチ
絶滅危惧II
絶滅危惧II
絶滅危惧II
絶滅危惧II
ムツゴロウ
絶滅危惧II
分布しない
分布しない
絶滅危惧II
ウナギ
準絶滅危惧
準絶滅危惧
準絶滅危惧
準絶滅危惧
ヤリタナゴ
準絶滅危惧
準絶滅危惧
準絶滅危惧
準絶滅危惧
カネヒラ
準絶滅危惧
準絶滅危惧
準絶滅危惧
準絶滅危惧
ギギ
準絶滅危惧
普通
準絶滅危惧
分布しない
アリアケギバチ
準絶滅危惧
分布しない
準絶滅危惧
普通
メダカ
準絶滅危惧
準絶滅危惧
準絶滅危惧
準絶滅危惧
イトヨ(降海型)
準絶滅危惧
分布しない
準絶滅危惧
分布しない
ヤマノカミ
準絶滅危惧
分布しない
分布しない
準絶滅危惧
オヤニラミ
準絶滅危惧
準絶滅危惧
絶滅危惧II
準絶滅危惧
シロウオ
準絶滅危惧
準絶滅危惧
準絶滅危惧
分布しない
カワアナゴ
準絶滅危惧
情報不足
準絶滅危惧
準絶滅危惧
ハゼクチ
準絶滅危惧
分布しない
分布しない
準絶滅危惧
シロチチブ
準絶滅危惧
準絶滅危惧
分布しない
準絶滅危惧
アユ
天然不明
天然不明
天然不明
天然不明
サケ
天然不明
分布しない
天然不明
分布しない
ヤマメ
天然不明
放流
天然不明
天然不明
アマゴ
天然不明
天然不明
放流
放流
スジシマドジョウ中型種
情報不足
情報不足
情報不足
情報不足
カンテンイシヨウジ
情報不足
情報不足
情報不足
情報不足
クボハゼ
情報不足
情報不足
情報不足
情報不足
チクゼンハゼ
情報不足
情報不足
情報不足
情報不足
クロヨシノボリ
情報不足
情報不足
情報不足
情報不足



絶滅
豊前地方
筑前地方
有明地方
カジカ(回遊型)
カジカ(回遊型)
カジカ(回遊型)

カワバタモロコ


ヒナモロコ

1
3
1
絶滅危惧IA

豊前地方
筑前地方
有明地方
アカザ
セボシタビラ
セボシタビラ

イシドジョウ
カワバタモロコ

クルメサヨリ
ヒナモロコ


アリアケシラウオ


アリアケヒメシラウオ
1
3
5
絶滅危惧IB

豊前地方
筑前地方
有明地方

スナヤツメ
スジシマドジョウ小型種

スジシマドジョウ小型種
アカザ

アカザ


トビハゼ

0
4
2
絶滅危惧II

豊前地方
筑前地方
有明地方
ニッポンバラタナゴ
ニッポンバラタナゴ
エツ
カゼトゲタナゴ
カゼトゲタナゴ
ニッポンバラタナゴ
ドジョウ
ドジョウ
ドジョウ
カジカ(陸封型)
カジカ(陸封型)
カジカ(陸封型)
タビラクチ
タビラクチ
タビラクチ

オヤニラミ
ムツゴロウ
5
6
6


セボシタビラ (コイ科)
Acheilognathus tabira subsp. 2
絶滅危惧IA類(福岡県)
ヤマノカミ(カジカ科)
Trachidermus fascitatus
準絶滅危惧(福岡県)
イシドジョウ (ドジョウ科)
Cobitis takatsuensis
絶滅危惧IA類(福岡県)
カゼトゲタナゴ(コイ科)
Rhodeus atremius atremius
絶滅危惧II類(福岡県)
アカザ (アカザ科)
Liobagrus reini
絶滅危惧IB類(福岡県)
写真提供 井上大輔(北九州高校)、竹下直彦(水産大学校)、橋本哲男(田主丸養護学校)、九州環境管理協会




「福岡県のレッドデータブック」が出版されています。下の表は、絶滅の危険を示した区分けとその基準(魚類に関する部分)を示しています。


絶滅
絶滅
すでにいなくなってしまったと考えられる。
野生絶滅
飼育下のみで存続している。
絶滅危惧I類
絶滅危惧IA
このままの状態が続けば、ごく近い将来野生での存続が困難になる。
絶滅危惧IB
IAほどではないが、このままの状態が続けば、ごく近い将来野生での存続が困難になる。
絶滅危惧II類
絶滅の危険が増大している。
準絶滅危惧
今現在での絶滅の危険は少ないが、生息条件の変化により絶滅の危険が増大する可能性がある。
情報不足
評価できるだけの情報がない。
天然不明
天然分布が認められた水域で放流が行われ、もともといた個体群がどうなってしまったかわからなくなっている。
放流
天然には分布していないにもかかわらず放流によって生息する。




 今回のレッドデータブックのデータは貴重な基礎資料となります。今後、情報をさらに積み重ね、何年かあとには見直しをおこなう必要があります。この見直しを続けることで、数が減っていることだけでなく、どんな減り方をしているかを知ることができます。さらに、大人と若い個体の割合や、毎年どのくらい子供が生まれているかといったことがわかれば、今後その生き物の数がどうなっていくかの可能性を計算によって推定することができます。この可能性(絶滅確率)をもとにした絶滅の危険性の区分けは、具体的で効率的な対策のためのより明確な目安となります。

作成者
協力
松井誠一  まついせいいち (生物資源環境科学府 附属水産実験所) 
福原美恵子 ふくはらみえこ (総合研究博物館)