■混血の進行■

 渡来的形質とされる顔の高さ、眼窩の高さ、梨状孔(鼻の部分の孔)の細長さを示す示数を軸にとって古墳人をみてみると、梨状孔は九州内では筑前から離れるほど横広になり、本州では北部九州と近畿・山陰を細長さの二つのピークとして中部瀬戸内が谷間のようになっているのがわかる。また、関東・東北も同様な値であり、近畿からの流れで理解できる。


 ところが、顔の高さは、九州内では南九州を除くとそう大差はない。しかし、本州では梨状孔と同じく北部九州と近畿・山陰をピークとして中部瀬戸内が谷間のように低い。逆に、眼窩の高さをみると、九州内では筑前と他の地域に差があり、本州では山陰・近畿が高い値を示すものの大差はない。また、関東・東北の古墳人は顔の高さも眼窩も高い値を示しており、北部九州の弥生人・古墳人とほぼ同じである点は注目される。


 このように、ほとんどの地域の人骨に何らかの渡来的形質が表れており、混血が進んでいたことがわかる。また、北部九州と山陰・近畿に二つの渡来的形質のピークがあることは、渡来的形質がこれらの地域へ選択的に向かったことを示している。とくに近畿は古墳時代に多くの渡来人が来たことが文献に記されており、その反映でもあろう。また、関東・東北地方にも渡来的形質はおよんでいることは、文献に登場する近畿勢力の進出や渡来人の関東移住などとの関連で興味深い。


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