古代人は、成人式や婚姻、服喪などに関連して、健康な前歯を無理矢理引き抜く、かなり乱暴な風習を持っていた。日本では縄文時代後半に大流行したが、渡来系弥生人の代表的存在である土井ケ浜集団でも、なぜか盛んにこの風習を実施しており、同集団を渡来系とする見解に疑義が出されていた。しかし、土井ケ浜弥生人の抜歯には、上顎側切歯を抜去する、古代中国と共通する型式が多く、この点でも大陸の影響を受けた可能性がある。
(中橋孝博)