永淵 正法(医療技術短期大学部 教授)
はじめに
身体を守るシステムの中で、とくに病原微生物を排除する免疫系はもっとも重要なシステムです。免疫系は、複雑なシステムですが、しかし、巧みに調節されています。すなわち、少ない病原体には少なく反応し(ちゃんと労力を節約している)、激しく、あるいは広く侵入した病原体には強く反応します。また、過去に攻撃してきたことのある病原体には、2度目は、特異的に、より強く、かつ素早く反応することができます。これを、免疫の特異性と記憶と呼び、免疫システムの重要な特徴なのです。
免疫システムを構成する細胞と分子群、
それぞれの相互作用とその調節
免疫系の中心として、抗原(すなわち病原微生物)を取り込み、抗原としてT細胞に提示する(すなわち、これが病原体ですよ、とT細胞に知らせる)抗原提示細胞(antigen
presenting cell:APC)と、その刺激を受け、免疫応答全般を調節するT細胞があります。T細胞は免疫応答のレベルを決定し、B細胞を刺激して抗体を作らせたり、マクロファージを活性化して感染防御力を強め、ときには自らが細胞障害性T細胞となって感染防御に関わります(下図)。一方、外敵には反応するものの自分には反応しない(これを免疫寛容と呼びます)システムがあり、これが破綻すると自己免疫病が起こってしまいます。
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