− 資源利用のあゆみ −

 私たち人類は、地球のめぐみを利用しながら社会をつくってきました。九州の鉱物資源とエネルギー資源も、過去から現在まで時代ごとに、いろいろに使われています。縄文時代、九州に暮らしていた人々が畑や水田を作るようになると、森を切り開くために良質の石の斧を求めるようになりました。ちみつで硬い玄武岩が糸島半島の今山(福岡市西区)にあります。そこは弥生時代に北部九州全体で使われた石斧の重要な産地でした。


 古代に統一した国をつくるためには、すぐれた武器を作ることができる鉄が必要でした。糸島半島の海岸からは日本で最良の砂鉄が取れます。千3百年前に、これを原料として鉄をつくった人々がいました。最近(1999年)、福岡市西区の元岡にある九州大学移転用地から、たくさんの製鉄炉の跡が見つかりました。この製鉄遺跡に立つと、古代の国をつくった人々の意気込みが伝わってくるようです。このほか古代に利用されていた地下資源としては、長崎県対馬の銀、筑豊の香春岳の銅をあげることができます。


 石炭と金は、九州では中世に発見されて利用されるようになりました。火山の噴気からとれる硫黄は、大友家や島津家で外国との貿易品として重要でした。近世に入ると、地下資源の利用はいっそう広がりを見せ、金山と銅山、錫山の開発が進みました。陶磁器の原料となる陶石が各地で採掘されました。石炭は江戸時代の末には、家庭で使われるだけでなく、海水から塩をとる製塩業や大砲を鋳造する反射炉の燃料、汽船の蒸気機関の燃料として、使用量が増えていきました。


 明治に入って、石炭、金、銅はますます重要な資源として開発され、このほか、セメント原料の石灰石の採掘がはじまりました。地熱エネルギーの発電への利用は最近のことです。一方では、池島炭坑(長崎県)が閉山し、九州の石炭開発の歴史が終わろうとしています。ここでは、九州の地下資源の特徴を示す石炭と金と地熱について紹介します。

1.地球からのおくりもの −石炭・金・地熱−
2.地下資源の宝庫九州 −九州の地下資源マップ−
3.九州大学における九州の地下資源の研究史



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