|
カイガラムシ類は植物に固着して、口吻を突き刺しそこから養分を吸って成長します。体表は自らが分泌したロウ物質で覆われており、外敵から守られています。1齢幼虫は歩行あるいは風に乗って分散し、生育に適した場所をさがし、そこに定着します。定着後、雌は一生そこから動きませんが、雄は有翅成虫となり、交尾のために雌をさがします。 |
ヤノネカイガラムシは1900年代の始め頃、中国から侵入し、長崎県で初めて発見されました。かつては、柑橘類の最重要害虫とみなされ、生物的防除が成功する以前は、柑橘類の害虫防除体系はヤノネカイガラムシの防除を中心に行われていました。 (右) ヤノネカイガラムシの被害で枯死寸前の温州ミカン幼木
|
|
|
|
|
ヤノネカイガラムシは中国原産なので、有力な天敵が中国にいることは予想されていました。1980年に、中国から輸入されたヤノネキイロコバチとヤノネツヤコバチは、日本全国の柑橘栽培地帯に放飼されました。その後、2種の寄生バチは日本に定着し、ヤノネカイガラムシの防除のために化学農薬を何度も散布する必要はなくなり、2000年にはヤノネカイガラムシは指定害虫のリストからはずされたのです。 |
この園には、1982年にヤノネキイロコバチが放飼され、1992年にもう1種のヤノネツヤコバチが外部から侵入し、定着しました。1982年以前は、薬剤による防除を怠るとヤノネカイガラムシの増加で、木が枯死することもありましたが、1982年以降、ヤノネカイガラムシ密度は低く保たれました。 |
ポスター担当 高木 正見 (Masami TAKAGI)(農学研究院 天敵昆虫学分野・教授) |