実用化された天敵資材


天敵資材と「天敵農薬」


オランダを中心とした西ヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国では、以前から商業手的に大量増殖された天敵が市販されており、これらの天敵は施設園芸や果樹園などで利用されています。日本でも、1995年にチリカブチダニとオンシツツヤコバチが「天敵農薬」として農薬登録され、積極的な天敵利用の幕開けとなりました。生物的防除に利用する天敵生物を天敵資材といいますが、農薬登録された商品は「天敵農薬」と呼ばれています。



写真1 ハダニ類の捕食者、チリカブリダニ
写真2 チリカブリダニの放飼

ボトルにはバーミキュライトと一緒にチリカブリダニが入れてあります。これをイチゴの葉の上に少量ずつ散布します。
写真3 オンシツコナカイガラムシに産卵中のオンシツツヤコバチ
写真4 製品化されたオンシツツヤコバチ

オンシツツヤコバチのマミーをのり付けしたシートが市販されています。このシートを1枚ずつちぎって、トマトやキュウリなどの枝に掛けていきます。マミーからはハチが羽化してきます。



化学農薬と天敵農薬の違い


天敵農薬は化学農薬と異なり速効性がありません。害虫が大発生する前に放飼しておく必要があります。しかし、いったん天敵が定着していれば、新たに侵入してきた害虫を持続的に抑えます。



国産の天敵農薬


現在、日本で使用されている天敵農薬の多くは欧米からの輸入品ですが、日本で天敵農薬として登録された第1号は、実は国産でした。リンゴの害虫クワコナカイガラムシの生物的防除の目的でクワコナカイガラヤドリコバチが1970年に登録されました。残念なことに、製造は1年で中止されました。理由は、生産コストが高すぎたことと、当時は、天敵の利用法についての情報も不足していたことが原因でした。天敵農薬の普及に伴い、今日では、ナミヒメハナカメムシとタイリクヒメハナカメムシが国産の天敵として農薬登録されています。


写真5 クワコナカイガラムシ(左)とクワコナカイガラヤドリコバチのマミー(右)
写真6 製剤化されたクワコナカイガラヤドリコバチ
写真7 ミナミキイロアザミウマ幼虫を捕食中のナミヒメハナカメムシ


ポスター担当

高木 正見 (Masami TAKAGI)(農学研究院 天敵昆虫学分野・教授)


【会場マップに戻る】 【もどる】 【すすむ】