福岡県版レッドデータブック

- 昆虫類 -


レッドデータブックとは、緊急に保護を要する動植物の種選定調査結果の概要のことです。福岡県版は、わが県に生育、生息する野生動植物を対象に絶滅の恐れのある野生生物の種を的確に把握し、それらの種の分布や生息状況等を明らかにするためにまとめられたものです。希少となった種を保護し生息環境を保全する方法を模索することはいうまでもなく、ひいては人為的要因による種の絶滅を防止するための重要な基礎データとされています。福岡県産昆虫類については、森本 桂(九州大学名誉教授)と矢田 脩(九州大学教授)が中心となり編集されました(2001年3月刊)。

福岡県には、チョウ類約100種、ガ類約1000種以上、コウチュウ目3000種以上、トンボ目88種、ゴキブリ目9種、シロアリ目5種などが生息し、昆虫種数は日本産のおよそ1/3前後と推定されています。

福岡県は、九州大学とその附属の彦山生物学実験所の教官、学生により分類学的研究が多数報告されていることから、多くの種の模式産地となっています。また、分布の北限や西限となる種も知られています。

しかし、近年の環境破壊により多くの昆虫の著しい衰退が目立ってきています。



昆虫数の衰退原因


1,天然林の減少と人工林(スギ、ヒノキ)の増加
   森林の単純化による昆虫相全体の衰退
   チョウ類をはじめとする植食性昆虫類の著しい減少
2,河川、水田、池などの減少と水環境の悪化
   農薬の大量散布、河川改修工事、山地での工事による土砂の流入、埋め立てによる水環境の減少 モ    ゲンゴロウ、ホタル、タガメ、トンボなどの水棲昆虫に壊滅的影響
3,都市化、宅地化、河川敷整備、自然海岸の減少
    草原、河原、荒れ地性チョウ類の衰亡
    志賀島勝馬河口のルイスハンミョウの絶滅
4,農業形態の変化にともなう衰退
   養蚕業の衰退にともなう桑畑の減少 モ 桑の害虫トラフカミキリの減少
   牛馬の減少 モ 糞に生息するダイコクコガネ、ツノコガネの減少
    薪炭林としての雑木林の伐採
     モ シイタケほだ木の害虫ミドリカミキリの減少
     モ 雑木林を生息場所としているチョウ類の減少
5,同好者の採集圧
   英彦山のルリクワガタ類:朽ち木の完全な破壊と幼虫の根こそぎ採集
   筑後平野のオオクワガタ:業者による乱獲


レッドデータブックでは、上記の現状を踏まえ、絶滅: 2種、絶滅危惧 () 類: 41種、絶滅危惧 () 類: 66種、準絶滅危惧: 40種を選定しました。


ポスター担当

森本 桂 (Katsura MORIMOTO)(九州大学名誉教授)

矢田 脩 (Osamu YATA)(比較社会文化研究院 生物多様性分野・教授)


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