退化は進化ナリ

- ミノムシの究極の性 -


 ミノムシと言えば、多くの人が冬に木の枝にぶら下がっている細長いミノを想像します。でも「ミノムシってどんな虫?」と聞かれて、その正体をきちんと答えられるでしょうか。実はミノムシはミノガ科という蛾の幼虫なのです。成長した雄は普通の蛾の姿をしていますが、雌は様々な姿をしており、同じ生き物とは思えないような姿と特別な行動の中に、進化の歴史が隠されています。つまりミノガ科の進化の歴史をたどるヒントは、現生のミノガ科の多様性の中に求めることができるのです。



有翅有脚型


a)♂を誘引している♀
b)交尾姿勢
c)ミノの中に産卵中の♀

♀は飛翔力のある翅と成熟した卵を持ち、ミノの中などや物の隙間に産卵する習性があります。


無翅有脚型1


a)♂を誘引している♀
b)交尾姿勢
c)ミノの中に産卵中の♀

♀の翅は退化し、脚の歩く力も弱く、ミノの中に産卵します。


無翅有脚型2


a)♂を誘引している♀
b)交尾姿勢

♀はミノの中に残した蛹の殻の中に産卵します。


無翅無脚型


a)♀成虫(左側:頭部)
b)ミノ内の蛹殻に入っている♀
c)交尾姿勢(♀の体と蛹殻の間に♂の腹部を入れていく)


翅や脚は残っても痕跡だけでウジのような♀は、蛹の殻の中で交尾し、産卵します。生殖機能だけを集約させた♀の究極の進化の姿です。


ポスター担当

杉本 美華 (Mika SUGIMOTO)(比較社会文化学府 生物多様性分野・院生)

三枝 豊平 (Toyohei SAIGUSA)(九州大学名誉教授)


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