炭素を多く用意する
図2に示すように、九大タンデム加速器で炭素を加速してヘリウム標的に衝突させ、出来た微量の酸素を大量の炭素から分離して測定する。
九大タンデムは大型タンデムなので、低いエネルギーで起こる星での核反応の実験には不向きである。そこで知恵を絞って加速減速強集束と言う世界初の方法を考案し、アルミパイプ4本を取り付けるだけで九大タンデムを小型タンデム並みに改造した(図3)。数万円で数億円の小型タンデムを手に入れたことになる。アルミパイプを外せば元の大型タンデムに戻る。
さらに低エネルギービームのために、タンデム内のビーム荷電剥離器を薄膜から気体に変えた。通常この変更をするとビーム量が減るが、世界最大の口径にしたため全然減少しなかった。以上2つの改造によって星での核融合実験に使える炭素ビーム量は1,000倍に増えた。
ヘリウムを多く用意する
通常はビームが通過してくる真空中に、薄膜で囲ったヘリウムガスを置く。しかし今の実験では低エネルギー酸素が薄膜で止まってしまうので、膜なしでヘリウムガスを真空中に置く必要がある。
九大独自の膜なしヘリウムガス標的を図4に示す。ビームの通過する狭いトンネルの内壁からガスを斜めに吹き込んでガスを閉じ込める。この新方式で標的が厚く、かつ標的境界が急峻になった。理化学研究所、東京大学でもこの九大方式を採用している。更に最近ヘリウムガスを液体窒素(-196℃)で冷却して2.5倍厚くした。これで厚いヘリウム標的が用意出来た。
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