地球史とテクトニクス 〜46億年の歴史を調べる〜
History of the Earth. Understanding of 4.6 Ga Earth from Geology

 実際の地球を野外調査(地質調査)から研究していくとき、そこには、時間軸の入った4次元の地球を実感できる。地球の歴史をひも解くためには、さまざまな時代の地球上に残った地層に残る当時の記録を解読していかねばならない。


[主な研究]

1) 初期地球のテクトニクスと環境変動。
2)PT境界・KT境界などの地球異常事変と生物変遷。
3)時空を越えた石灰岩に残る地球環境変遷と生物進化。
4)堆積相解析による高精度海水準変動と環境・テクトニクス復元。
5)付加体地質学による日本列島形成メカニズム解析。 時間軸に沿って、研究例を紹介する。
  世界/日本地図には研究を行っている場所を記入している。



太古代・原生代境界 (25 億年前)[Archean/Proterozoicboundary (2.5 Ga)]

 25億年前は、地球上の酸素が急激に上昇した時代である。巨大縞状鉄鉱層(Banded Iron Formation) の出現は大気中に酸素が存在した証拠となる。この鉄鉱層は海水中の2価Feが酸化されて3価Feとなり沈殿してできたものである。
 西オーストラリア・ピルバラクラトンには世界最大の縞状鉄鋼層(ハマスレー層群)が分布しており、当時の環境を記録している。これらの地層の前後関係を詳しく調べることにより、酸素を供給したであろう、莫大なバクテリアの死骸の地層(黒色頁岩)が存在し、その関連が明らかになってきた。


25億年前、ブロックマン縞状鉄鉱層。ハマスレー層群、西オーストラリア
[Brockman Iron Formation, Hamersley Group, Western Australia]

日本最古の礫(20億年前)を含む上麻生礫岩

 日本列島を含む東アジア東縁は変動帯と呼ばれる、プレートのせめぎあう、非常に地殻変動の激しい地域である。この地域はジュラ紀の終わりから白亜紀にかけて大きな地殻変動が起きた。
 この礫岩はジュラ紀の終わり頃、古アジア大陸から深海底にもたらされた土石流堆積物である。ジュラ紀の深海底はその後の地殻変動により隆起して、現在岐阜県の険しい山々を作っている好例である。


ジュラ紀終わり頃(1億6000万年前)に堆積,岐阜県七宗町
[Kamiaso Conglomerate, Mino Terrane]

McConnel 衝上断層

 カンブリア紀中頃(約5億3000万年前)の石灰岩が、ほとんど水平のスラスト断層に沿って、白亜紀後半(約7500万年前)の砂岩・泥岩の上に重なっている地質構造。植生の違いに注目。
==大山脈形成の謎を解くヒントがここにある。==


カナダ、アルバータ州のロッキー山脈東縁部。
[McConnel thrust fault, Canada]

三畳紀中頃(2億2000万年前)層状放散虫チャート

 チャートはSiO2が90%以上を占める岩石で、特に珪質の殻を持つプランクトンが深海で静かにつもってできたと考えられている。数cm程度の層状に重なった地層を作ることが多い。
 チャートは大洋の底で、当時の海洋環境の情報を記録しつつ長期間連続的に堆積しており、過去の海洋の様子をひもとくには格好の素材である。チャートは赤・緑・白・黒など色調が多彩であるが、これも当時の海洋環境を反映するものである。


岐阜県七宗町 飛騨川沿い
[Bedded radiolarian chert, Mino Terrane]

約3億年前の付加した海山

 秋吉台の石灰岩は古太平洋 (パンサラッサ海) の海山上で、石炭紀・ペルム紀の間形成された。堆積当時は赤道付近の熱帯域に位置していたと考えられている。その海山がプレート運動によって、移動し付加することによって、日本列島の一部になった。現在、この3億年前の海山である秋吉台は、広大なカルスト地形をつくり、特別天然記念物として保護されている。


山口県 秋吉台
[Limestone, Akiyoshi-Dai]

フズリナ石灰岩薄片写真(岐阜県・舟伏山)[Fusulinids limestone, Funabuse-yama]

 フズリナは原生動物有孔虫の仲間で、浅海のみに生息した底棲生物である。石炭紀・ペルム紀のみに繁栄した。進化の速度が速く、汎世界的に分布することから、時代対比に使う示準化石として昔から研究されてきた。
この岩石は Parafusulina kaerimizensis などを含むので、ペルム紀中世にできたことがわかる。

白亜紀・第三紀境界 (6500万年前)[ KT boundary, Cuba]

 白亜紀の終わりに、ユカタン半島チュチュラブに隕石が落下した。この出来事を境に恐竜をはじめとする大絶滅が起こった。キューバは当時ユカタン半島に最も近く、隕石落下の影響を直接受けた地層が残っている。川沿いには隕石衝突による大崩壊によりできた礫岩層が厚く分布している。礫岩中の礫と礫のあいたを埋める泥岩から隕石衝突に特有の衝撃石英・スフェルール(蒸発した岩石が吸着して丸い粒子になったもの)が見つかっている。


層厚700mにおよぶカカラヒカラ層、西キューバ

衝撃石英の偏光顕微鏡写真
[Thin section of the Shocked quartz]

 隕石衝突による高圧力でできる平行な模様をもつ石英。これは、圧力で石英結晶がある方向性をもって融ける時にできる。この組織をPDF (Planer Deformation Feature)と呼ぶ。この方向をユニバーサルステージで測定し、石英C-axisとの角度を測定することにより、構造運動でできた変形と区別できる。

古第三紀 (2900万年前)氷期の海水準の記録

 地層には海水面の上昇・沈降が記録されている。地層形成のメカニズムや当時の水深の解析データを手がかりに、その場所での海面変動(相対海水準変動)が解読できる。この中には世界規模で生じた共通の変動(ユースタティック変動)が検出できる。
 写真は、約2900万年前の世界的な大海退で、海面は約150メートルも低下した。深海底で乱泥流によって堆積した地層を干潟の地層が直接被っているのが観察できる。


北九州の古第三紀層に記録された大規模な海退の記録、北九州市若松区狩尾岬
[Kario-misaki, Kitakyushu]

パネル作成者: 清川昌一、佐野弘好、坂井 卓、井川敏恵、石田直人 (理学研究院地球惑星科学部門) 

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