■弥生人の人口増加■
渡来人の数は本当に大量だったのか。その問題を解くカギは、弥生人の人口増加の実態にある。大量渡来説が考えるように、年間の人口増加率は0.1%程度だったのか、それともそれを上回ったのか。
考古学では、弥生時代の始まりからしばらくたった前期後半〜末の時期に、各地で遺跡の「爆発的増加」があったことを明らかにしている。したがって、その増加が、年間増加率で表すとどのくらいになるのかがわかれば、比較をすることができる。
遺跡が増加した地域の例として、丘陵のほとんど全てを調査した小郡市の一角を対象にして段階ごとに表したのが図であるが、弥生時代の始まりの時期に7ヶ所であった遺跡が、前期後半には15ヶ所、前期末〜中期初頭には34ヶ所に増えている。この遺跡数をもとに計算すると、前期後半までが0.762%、それから前期末までが0.818%となり、弥生開始期から前期末までが0.790%となって、いずれも高い増加率を示す。また、図のように遺跡の面積・規模は、前期後半から大きくなっており、実際には1.00%をもこえる高い人口増加率であった。
したがって、わが国における人口増加を渡来人によると考えるのではなく、稲作農耕の定着とともにおこった人口の急激な増加によると考える方が自然であろう。
(田中良之)
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